きっとずっと、心の中で光り続けるんだと思った。
八月の終わり。
夜になると、少しだけ風が涼しくなっていた。
夏休みも、あと少し。
優月は宿題の追い込み中。
机の上には、プリント、読書感想文、自由研究。
そして。
なぜか結愛。
「ゆあもべんきょうする!」
隣でクレヨンぐるぐる。
完全に参加していた。
自由研究のテーマは――
“家族の思い出”。
優月は、アルバムを見ながら一生懸命まとめている。
「どのしゃしんにしよう……」
真剣。
でも。
選ぶ写真が全部おもしろ系。
僕が転んでる。
結愛がプリンまみれ。
唯ちゃんが寝落ちしてる。
「もっと普通の写真ないの!?」
優月、大笑い。
「これがいいの!」
結愛まで指差して笑ってる。
「ころぶぱぱ!」
定着しすぎていた。
夜。
自由研究が、ようやく完成した。
画用紙いっぱいに貼られた写真。
その横には、優月の字でコメントが書かれている。
『ぱぱはよくころびます』
そこは外せないらしい。
でも。
最後のページ。
そこには、小さな文字でこう書いてあった。
『わたしは、このおうちがだいすきです』
僕は、その一文を見た瞬間。
胸がじんわり熱くなった。
唯ちゃんも、隣で優しく笑っていた。
「いい研究だね」
優月は、少し照れくさそう。
「えへへ」
その時。
結愛が急に聞いてきた。
「ねぇね、おとなになったらどうするの?」
優月は少し考える。
「えほんつくる!」
「ゆあは?」
「ぷりんやさん!」
即答。
僕、吹き出す。
「プリン専門店?」
結愛、真剣に頷く。
「いっぱいたべる!」
経営方針が危険。
唯ちゃん、笑いながら言う。
「じゃあパパは?」
優月が即答。
「ころぶひと!」
「職業じゃない!!」
家族全員、大爆笑。
でも。
笑いながら、僕は思った。
子どもたちの未来は、まだ真っ白だ。
どんな夢を見て。
どんな人になるのか。
まだ分からない。
でも。
“好き”を見つけて笑っている今の顔を、ずっと忘れないでいてほしいって思った。
その夜。
ベランダで花火をした。
手持ち花火。
小さな火が、暗い夜にぱちぱち光る。
結愛は少し怖がりながらも、嬉しそう。
「きれー……」
優月は、火の先をじっと見つめていた。
「夏、おわっちゃうね」
その声は、少しだけ寂しそうだった。
僕は笑う。
「また来るよ」
「うん」
唯ちゃんは、そんな二人を写真に撮っていた。
火の光に照らされた横顔。
笑ってる顔。
少し大人っぽくなった優月。
まだ無邪気な結愛。
全部、愛しかった。
最後の花火が消える。
夜風が、静かに吹いた。
その時。
結愛が突然。
「ぱぱ!」
「ん?」
「だいすき!」
直球。
僕、即撃沈。
「……パパも大好きです」
優月が笑う。
「ぱぱ、よわーい」
唯ちゃんも笑ってる。
でも。
そんな風に笑われる時間が、何より幸せだった。
夏は終わっていく。
でも。
今日みたいな夜は。
きっとずっと、心の中で光り続けるんだと思った。




