表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
94/302

今日みたいな夏の日を思い出して、笑ってくれたらいいなって思った

夏休みが始まった。


朝から、家の中は大騒ぎ。


「ラジオたいそういくー!」


「まだねむいー……」


優月は元気いっぱい。


結愛は、半分寝ながら歩いてる。


僕は、そのさらに後ろでふらふら。


唯ちゃんが笑う。


「一番眠そうなのパパだよ」


完全にそうだった。


ラジオ体操の帰り道。


空はもう夏色。


セミの声。


朝の匂い。


優月は、急に走り出す。


「みてぇ!」


手の中には、小さなセミの抜け殻。


結愛、後ろへ隠れる。


「こわいぃ!」


でも数秒後。


「……さわる」


好奇心が勝った。


夏だった。


その日の午後。


家族みんなで、押し入れの片付けをすることになった。


でも。


途中で、古いアルバムが出てきてしまう。


終わるわけがない。


優月は興味津々。


「ちいさい!」


そこには。


赤ちゃんの頃の優月。


髪ぼさぼさ。


泣いてる写真。


笑ってる写真。


全部、小さい。


結愛も大騒ぎ。


「ねぇね、あかちゃん!」


優月、真っ赤。


「みないでぇ!」


でも。


ページをめくるたびに、家族みんな笑ってしまう。


その時。


一枚の写真で、全員止まった。


僕が盛大に転んでる写真。


しかも。


結婚式。


「なんで撮ってるの!?」


唯ちゃん、涙出るほど笑ってる。


「最高の瞬間だったから!」


優月と結愛、転げ回る。


「ぱぱぁぁ!!」


僕、頭抱える。


でも。


その写真の僕は、ちゃんと笑っていた。


少し恥ずかしくて。


でも、幸せそうに。


アルバムの最後の方には。


優月が生まれた日の写真。


結愛が初めて歩いた日の写真。


四人で初旅行した写真。


思い出が、いっぱい詰まっていた。


優月が、静かに呟く。


「なんかさ」


「うん?」


「ちゃんと、家族になっていってるね」


その言葉に。


僕も唯ちゃんも、少し驚いた。


優月は写真を見つめながら続ける。


「さいしょからじゃなくて、ちょっとずつ」


僕は静かに頷く。


本当にそうだった。


笑って。


ケンカして。


泣いて。


支え合って。


そうやって。


少しずつ、“家族”になってきた。


その時。


結愛が突然、アルバムを抱えて走り出す。


「ゆあもみるー!」


そして――


ツルッ。


「あっ」


僕、反射的に飛び出す。


優月も飛び出す。


唯ちゃんも叫ぶ。


ギリギリでアルバムキャッチ成功。


静止。


数秒後。


家族全員、大拍手。


「まもったぁぁ!!」


結愛、超嬉しそう。


僕は笑いながら、結愛を抱き上げる。


「大事な宝物だからね」


結愛は、きょとんとしてから笑った。


「たからもの!」


夜。


片付けは、結局ほとんど進まなかった。


でも。


リビングには、アルバムが広がっていた。


笑い声も残っていた。


唯ちゃんが、小さく言う。


「こうやって増えていくんだね」


「うん?」


「思い出」


僕は、静かに頷いた。


きっと。


未来の優月や結愛が。


大人になって、このアルバムを開いた時。


今日みたいな夏の日を思い出して、笑ってくれたらいいなって思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ