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そんな時に、“好き”を守ってくれる誰かがいることって、きっと大事なんだと思う

梅雨が明ける頃。


空は、少しずつ夏の色になっていた。


ある日の夕方。


優月が学校から、少し元気のない顔で帰ってきた。


「ただいま……」


ランドセルを置く音も小さい。


僕と唯ちゃんは顔を見合わせる。


結愛だけは通常運転。


「ねぇね、おかえりー!」


抱きつく。


優月は笑おうとしたけど、少し無理してる感じだった。


夕飯のあと。


僕は、優月と二人でベランダに出た。


夜風が気持ちいい。


遠くで、虫の声が聞こえる。


しばらく黙っていると。


優月がぽつりと言った。


「……わたし、へんかな」


僕は静かに聞く。


「どうしたの?」


優月は、手すりを見つめながら話し始めた。


「みんな、もっとおしゃれの話とかするの」


「うん」


「でも、わたし、絵本とか描くの好きで……」


少し俯く。


「なんか、こどもっぽいかなって」


その声は、とても小さかった。


僕は、少し考えてから笑う。


「パパなんて、今でも秘密基地好きだよ」


優月、吹き出す。


「それは子どもっぽい!」


「でしょ?」


僕は肩をすくめる。


「でも、“好き”って、大事だと思う」


優月は静かに聞いている。


「周りと同じじゃなくても、優月が好きなものは、優月の宝物だよ」


風が、そっと吹いた。


優月は少しだけ目を潤ませながら笑う。


「……そっか」


その時。


後ろの窓がガラッと開く。


結愛、登場。


しかも頭にパンを乗せてる。


「ぱぱ!」


「なにその姿!?」


結愛、真顔。


「メロンパンマン」


僕と優月、大爆笑。


唯ちゃんなんて、キッチンで崩れ落ちてる。


結愛は満足げだった。


「へんしん!」


その瞬間。


優月が、涙を拭きながら笑った。


さっきまでの不安が、少しだけほどけたみたいだった。


夜。


寝る前。


優月は、自分のスケッチブックを開いていた。


そこには。


家族の絵。


うさぎの絵。


笑ってる人たち。


優しい色。


優月にしか描けない世界が、ちゃんとあった。


僕は、その横で言う。


「いい絵だね」


優月は少し照れながら笑う。


「ほんと?」


「うん」


僕は続けた。


「パパ、その絵好きだよ」


優月は、嬉しそうにスケッチブックを抱きしめた。


子どもって。


少しずつ、“自分はこれでいいのかな”って悩み始める。


周りと比べたり。


不安になったり。


でも。


そんな時に、“好き”を守ってくれる誰かがいることって、きっと大事なんだと思う。


夜更け。


子どもたちが眠ったあと。


唯ちゃんが、優月のスケッチブックを見ながら小さく言った。


「優月、優しい絵描くね」


僕は頷く。


優月はきっと。


“愛されてきた景色”を描いている。


だから、こんなに温かいんだろうなって思った。


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