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雨の中

ある雨の日。


外では、しとしと雨が降っていた。


せっかくの休日なのに、公園にも行けない。


結愛はソファでごろごろ。


「たいくつー……」


優月も机に突っ伏している。


「ひまだぁ……」


家の中に、“退屈オーラ”が充満していた。


すると。


唯ちゃんが、にやっと笑う。


「じゃあ、今日は特別イベントしますか」


子どもたち、即反応。


「なに!?」


「イベント!?」


唯ちゃんは、押し入れから大きな段ボールを持ってきた。


「秘密基地づくり!」


一瞬で空気が変わる。


「やるぅぅ!!」


結愛、飛び跳ねる。


優月も大興奮。


リビングは、あっという間に工事現場になった。


毛布。

クッション。

洗濯ばさみ。


全部使う。


僕も巻き込まれる。


「ぱぱ、そこもって!」


「はいはい!」


気づけば、僕が一番本気だった。


唯ちゃん、笑ってる。


数十分後――


巨大秘密基地、完成。


中は意外と広い。


子どもたちは大喜び。


「すごーい!!」


結愛なんて、もう住む気。


「ここ、ゆあのおうち!」


僕は笑う。


「パパ入っていい?」


結愛、真顔。


「だめ」


「なんで!?」


優月、大爆笑。


でも数秒後。


「……やっぱいいよ!」


許可おりた。


夜。


基地の中で、みんなでお菓子を食べる。


懐中電灯だけの灯り。


なんだかキャンプみたいだった。


優月がぽつりと言う。


「なんかさ」


「ん?」


「こういうの、ずっとおぼえてそう」


その言葉に。


僕は少し驚いた。


優月は、お菓子を食べながら続ける。


「たぶん、おとなになっても」


僕は静かに笑う。


「パパも覚えてるよ」


「え?」


「子どもの頃の、くだらない楽しかったこと」


秘密基地。

夜更かし。

雨の日の遊び。


そういうものって、不思議と消えない。


唯ちゃんも優しく頷いた。


「大きなイベントより、覚えてたりするよね」


結愛は話を聞いてない。


ポテチ食べてる。


しかも。


ぽろぽろ落としてる。


「こらー!」


数秒後。


基地の中で、ポテチ犯人探しが始まった。


犯人、結愛。


でも本人、全然反省してない。


「えへへ!」


結局、全員笑ってしまう。


夜遅く。


子どもたちは、秘密基地の中で眠ってしまった。


優月は、結愛を抱きしめるみたいに寝ている。


僕と唯ちゃんは、入口からその寝顔を見ていた。


静かな寝息。


小さな背中。


雨の音。


唯ちゃんが、小さく呟く。


「幸せって、こういうのかもね」


僕は頷く。


特別じゃない。


豪華でもない。


でも。


こういう時間が、ちゃんと心を満たしてくれる。


その時。


寝ぼけた結愛が突然。


「……ぽてち……」


僕と唯ちゃん、吹き出す。


夢の中でも食べてた。


雨はまだ降っている。


でも。


家の中は、すごく温かかった。


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