未来で一番!
夏祭りから数日後。
家の中では――
なぜか、“お祭りごっこ”が始まっていた。
主催者、優月。
参加者、結愛。
巻き込まれる人、僕。
優月は段ボールを並べて叫ぶ。
「いらっしゃいませー!」
結愛も真似する。
「しゃいませー!」
唯ちゃんは、キッチンから笑いながら見ていた。
「今日は何のお店ですかー?」
すると優月、ドヤ顔。
「うさぎやき!」
「たこ焼きじゃないんだ」
完全にうさぎ支配。
しかも。
商品は全部、おもちゃ。
ぬいぐるみ。
クレヨン。
なぜか靴下。
ラインナップ自由すぎる。
僕が座ると。
優月が紙のお金を差し出してきた。
「さんびゃくまんえんです!」
「高っ!?」
結愛、拍手。
「たかーい!」
唯ちゃん、笑い崩れる。
その時。
結愛が突然、僕の膝へ乗ってきた。
「ぱぱ」
「ん?」
「だいすき!」
直球。
僕、即ノックアウト。
「……パパも大好きです」
唯ちゃんが呆れ顔で笑う。
「弱いなぁ」
でも。
その“だいすき”の一言で、一日頑張れる気がした。
夕方。
優月は夏休みの宿題を広げていた。
読書感想文。
でも。
全然進まない。
五分書いて。
十分ボーッとする。
そして突然。
「むりぃぃ……」
机へ突っ伏す。
僕は隣へ座った。
「どんな話だったの?」
優月は少し考える。
「やさしいおはなし」
「どこが好きだった?」
「……みんなでわらってるところ」
僕は笑う。
「それ書けばいいじゃん」
優月はハッとした顔。
「そっか!」
単純だった。
でも。
優月らしかった。
結愛は、その横でお絵描きしている。
また、うさぎ。
しかも今日は。
うさぎが家族五人になってた。
僕は聞く。
「一人増えてるよ?」
すると結愛、にこっと笑う。
「みらい!」
僕と唯ちゃん、少し驚く。
「未来?」
結愛は頷く。
「いっぱい!」
その言葉に。
唯ちゃんは静かに微笑んだ。
子どもって。
時々、大人よりまっすぐ未来を信じてる。
夜。
宿題を終えた優月は、ソファでぐったりしていた。
「つかれたぁ……」
結愛は、そのお腹へ乗っている。
「ねぇね、ふわふわ!」
「おもいぃぃ!!」
でも。
優月はちゃんと結愛を抱きしめていた。
僕と唯ちゃんは、その光景を見ながら顔を見合わせる。
なんだかんだで。
二人は本当に仲良しだった。
その時。
突然停電した。
パチン。
部屋が真っ暗。
「きゃっ!?」
結愛、僕へしがみつく。
優月も少し不安そう。
でも。
僕が懐中電灯をつけると。
天井に光が広がる。
唯ちゃんが笑った。
「なんかキャンプみたい」
すると優月、急にテンションアップ。
「おばけやろう!!」
怖がってたのに即復活。
数分後。
家族全員で、懐中電灯を持ちながら“おばけ探し”が始まった。
結愛は怖がって僕の後ろに隠れる。
でも。
優月が「うわぁぁ!」って驚かせた瞬間。
僕が一番大声出した。
「うぉっ!?」
静止。
そして。
家族全員、大爆笑。
唯ちゃん、涙出るほど笑ってる。
「先生が一番びびってる!」
僕、完全敗北。
でも。
真っ暗な部屋の中で響く笑い声が、なんだかすごく温かかった。
停電が直る頃には。
子どもたちは笑い疲れて眠っていた。
僕は、ソファで眠る二人へ毛布をかける。
小さな寝顔。
重なる寝息。
唯ちゃんが、隣で小さく呟く。
「幸せだねぇ」
僕は静かに頷いた。
きっと。
こういう何気ない夜こそ。
未来で一番、思い出になるんだと思った。




