その温もりが、僕の人生を変えてくれた。
夏休み。
家の中は、いつも以上ににぎやかだった。
優月は毎日元気いっぱい。
結愛も、幼稚園に慣れてさらにパワーアップしている。
朝。
僕がまだ眠そうにしていると――
ドンッ!!
「ぱぱぁぁぁ!!」
結愛、飛び込み。
続いて。
「おきてぇぇ!!」
優月もダイブ。
僕、つぶされる。
「ぐぇっ」
唯ちゃん、キッチンで大爆笑。
「朝から事故現場」
でも。
そんな目覚めが、嫌じゃなかった。
ある日。
家族みんなで、夏祭りへ行くことになった。
浴衣姿の唯ちゃんは、やっぱり綺麗だった。
優月は、紫色の浴衣。
結愛は、小さなうさぎ柄。
本人、超お気に入り。
「うさぎ!」
もう誇らしげ。
屋台通りは、人でいっぱいだった。
金魚すくい。
焼きそば。
りんご飴。
全部キラキラして見える。
優月は、真っ先に射的へ走る。
「やる!!」
結果。
全部外す。
でも。
なぜか景品でもらったのは――
うさぎの笛。
店のおじさん、完全に察していた。
結愛は、綿あめを見て目を丸くしていた。
「くも!?」
僕と唯ちゃん、吹き出す。
たしかに雲だった。
でも。
食べた瞬間。
顔中ベタベタ。
優月、大笑い。
「ゆあちゃん、おひげ!」
結愛も負けずに笑う。
「ねぇねも!」
結果。
二人とも綿あめまみれ。
僕、拭く係。
その時。
花火のアナウンスが流れた。
夜空に――
ドォン!!
大きな花が咲く。
優月は「わぁぁ……」って目を輝かせる。
結愛は少しびっくりして、唯ちゃんへぎゅっと抱きついた。
僕は、その光景を静かに見つめる。
昔。
“幸せな家族”なんて、自分には遠いものだと思っていた。
でも今。
隣には唯ちゃんがいて。
子どもたちの笑い声がある。
その全部が、夢みたいだった。
花火を見上げながら。
優月が突然聞いてきた。
「ねえ、ぱぱ」
「ん?」
「おとなになっても、みんなでおまつりくる?」
その言葉に。
僕は少しだけ胸が熱くなる。
「来るよ」
「ほんと?」
「うん」
すると結愛も元気よく言う。
「くるー!」
唯ちゃんは優しく笑った。
「おばあちゃんになっても来ようか」
優月、大笑い。
「ぱぱ、ころびそう!」
「なんで未来でも転ぶの!?」
家族全員、爆笑。
その瞬間。
夜空いっぱいに、大きな花火が咲いた。
色とりどりの光が。
みんなの笑顔を照らしていた。
帰り道。
結愛は僕の背中で眠っていた。
優月は、唯ちゃんと手を繋いで歩いている。
小さな背中。
小さな手。
でも。
その温もりが、僕の人生を変えてくれた。
家へ着く頃には。
子どもたちはぐっすり。
僕と唯ちゃんは、静かなリビングで麦茶を飲んでいた。
窓の外からは、遠くの花火の音。
唯ちゃんは、小さく笑う。
「また思い出増えたね」
僕は頷いた。
きっと。
幸せって、“特別な何か”じゃない。
こういう夜を。
何度も一緒に過ごしていくことなんだと思った。




