表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
75/302

結愛が一歳になる頃

結愛が一歳になる頃。

家の中は、さらに騒がしくなっていた。

なにせ――

結愛、めちゃくちゃ動く。

ハイハイ超高速。

気づけばいない。

「あれ!?結愛!?」

探すと。

テーブルの下。

しかも笑ってる。

「きゃっきゃっ!」

優月が叫ぶ。

「ゆあちゃん、にげた!!」

毎日、小さな大捜索だった。

しかも。

結愛は、優月のことが大好きだった。

優月が学校から帰ると――

「ねぇぇぇぇ!!」

全力ハイハイ。

優月もランドセル投げて走る。

「ゆあちゃぁぁん!!」

毎日、感動の再会。

でも勢い余って二人で転ぶ。

ドタン。

僕と唯ちゃん、もう見慣れてる。

「はいはい、大丈夫ー?」

ある日。

優月が学校の宿題をしていた。

結愛は隣でクレヨンを持っている。

嫌な予感。

数秒後。

優月の宿題、芸術作品になる。

ぐるぐるぐる。

「ぎゃぁぁぁ!!」

優月絶叫。

結愛、満面の笑み。

僕、笑い堪えきれない。

唯ちゃんなんてソファで崩れてる。

「結愛、自由すぎる……!」

優月は半泣き。

「しゅくだいぃ……」

でも。

結愛が小さな手で優月のほっぺを触る。

「ねぇ♪」

その瞬間。

優月、許す。

「……もういい」

甘い。

姉、激甘だった。

そんなある休日。

唯ちゃんが、新しい絵本の読み聞かせイベントを開くことになった。

場所は、小さな図書館。

優月も結愛も、一緒に行く。

会場には、たくさんの親子。

唯ちゃんは少し緊張していた。

でも。

読み始めた瞬間。

空気が変わる。

優しい声。

柔らかい言葉。

子どもたちが、静かに聞き入っていた。

優月は誇らしそう。

「まま、すごいでしょ!」

結愛も拍手してる。

たぶん雰囲気。

読み聞かせが終わると、小さな男の子が唯ちゃんへ言った。

「またよんで!」

唯ちゃんは、少し驚いて、それから優しく笑った。

「うん。また読むね」

その姿を見ながら。

僕は思った。

唯ちゃんの“好き”は。

ちゃんと、誰かを幸せにしてるんだって。

帰り道。

夕焼け空。

優月は僕の隣を歩きながら言った。

「ゆづきね」

「ん?」

「ままみたいに、やさしいひとになりたい」

その言葉に。

僕は少し胸が熱くなる。

「なれるよ」

すると優月は、少し考えてから言った。

「ぱぱみたいに、おもしろくもなる!」

後ろで唯ちゃん爆笑。

「転ぶ係ね」

「違うから!?」

その瞬間。

僕、段差につまずく。

ガクッ。

優月、大爆笑。

「ほらぁ!!」

唯ちゃん、涙出して笑ってる。

結愛まで「きゃはは!」って笑ってる。

もう家族全員に“転ぶ人”認定されていた。

夜。

子どもたちを寝かせたあと。

僕は、静かな部屋を見渡す。

床には、おもちゃ。

クレヨン。

うさぎのぬいぐるみ。

にぎやかな証拠が、そこら中にある。

唯ちゃんは、僕の隣へ座って小さく笑った。

「大変だけどさ」

「うん」

「毎日、宝物みたいだね」

僕は頷く。

完璧じゃない。

バタバタだし。

失敗もする。

でも。

笑いながら過ごした今日が、きっと未来で大切な思い出になる。

そう思えた。

隣の部屋からは。

優月の寝言。

「……うさぎさん……」

そして。

結愛の寝言。

「……ねぇ……」

僕と唯ちゃんは顔を見合わせて、静かに笑った。

今日も、この家は幸せでいっぱいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ