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名前を考える

ある夜。

夕飯を食べ終わって、三人でリビングに集まっていた。

テーブルの上には、お菓子とジュース。

そして――

“赤ちゃんの名前候補ノート”。

唯ちゃんが真剣な顔で言う。

「今日は家族会議です」

優月も正座。

「かいぎ!」

僕は笑う。

「なんか社長いる」

唯ちゃんはノートを開いた。

「まず、男の子だったらどうする?」

すると優月、即答。

「うさぎ!」

「名前じゃない!」

僕と唯ちゃん、大爆笑。

優月は不満そう。

「かわいいもん!」

「かわいいけど、人間!」

唯ちゃん、涙出るほど笑ってる。

その後も。

「そら」

「ひなた」

「りく」

色んな名前が出る。

でも。

優月だけ、ずっと自由。

「ぴょんた!」

「だからうさぎから離れて!?」

会議、全然進まない。

しばらくして。

唯ちゃんが、お腹を撫でながら小さく言った。

「優しい子になってほしいな」

その声が、とても穏やかだった。

僕は頷く。

「うん」

「あと、自分の好きなものを大事にできる子」

それは、唯ちゃんらしい願いだった。

優月も真似して、お腹をなでなでする。

「やさしくする!」

その姿が可愛くて、僕たちは笑う。

すると突然。

優月が真剣な顔になった。

「ねえ」

「ん?」

「ゆづき、“おねえちゃん”になるんだよね?」

「うん」

優月は少し考えてから言う。

「じゃあね」

「うん」

「かなしいとき、ぎゅーする」

僕と唯ちゃん、一瞬黙る。

優月は続けた。

「いっぱいわらう!」

「いっぱいあそぶ!」

「まもる!」

その言葉が。

小さいのに、すごく頼もしかった。

唯ちゃんは、もう完全に涙目。

「優月ぃ……」

僕も胸が熱くなる。

気づけば。

泣いてばかりだった小さな子が。

今、“誰かを守りたい”って言っている。

その成長が、嬉しかった。

しばらくして。

唯ちゃんがふと笑う。

「女の子だったら、どうしようか」

僕は少し考える。

優月みたいに。

優しくて。

温かい名前がいい。

すると優月が突然叫ぶ。

「きらら!」

「おっ、かわいい」

「あと、“いちご”!」

「食べ物!?」

優月、大笑い。

会議は完全に脱線していた。

でも。

そんな時間が幸せだった。

名前を考えるって。

“これから生まれてくる未来”を考えることなんだと思った。

夜が更けて。

優月が眠そうにしながら、僕の肩へもたれてくる。

「ねむい……」

「そろそろ寝ようか」

すると優月は、うとうとしながら呟いた。

「赤ちゃんにもね」

「うん?」

「“おかえり”っていう」

その言葉に。

唯ちゃんが、そっと笑った。

「きっと喜ぶね」

窓の外では、静かな月明かり。

その優しい光の中で。

僕たちは、まだ見ぬ小さな命の未来を、ゆっくり想像していた。

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