ケンカしても、あなたと家族でいたい!
年が明けて。
優月は二歳になった。
そして――
めちゃくちゃ喋るようになった。
朝からずっと喋ってる。
「ぱぱー!みてー!」
「ままぁー!うさぎー!」
「これなにー!?」
質問が無限。
僕と唯ちゃん、毎日ヘトヘト。
でも、可愛い。
ある休日。
僕は珍しく寝坊していた。
すると突然、顔に重み。
「ぐぇっ!?」
目を開けると。
優月、僕の上に座ってる。
しかも真顔。
「ぱぱ、おきて」
「……はい」
唯ちゃんは隣で大爆笑。
「起こし方が強い」
その後。
三人で朝ごはん。
優月は最近、“自分でやりたい期”に突入していた。
「ゆづきやる!」
スプーンを握る。
でも。
五秒後。
ヨーグルト、床へ着地。
僕と唯ちゃん、固まる。
優月、自信満々。
「できた!」
唯ちゃん、吹き出す。
「うん、床が食べたね」
そんな毎日。
笑うことは多かった。
でも。
ある夜。
久しぶりに、大きなケンカをした。
原因は、本当に小さなことだった。
僕が仕事で疲れて帰ってきて。
唯ちゃんも、締切前で余裕がなくて。
優月もイヤイヤ期で大暴れ。
ご飯をひっくり返し。
「いやぁぁぁ!!」
って泣き叫び。
部屋はカオス。
僕もついイライラしてしまった。
「ちょっと甘やかしすぎじゃない?」
その瞬間。
唯ちゃんの顔色が変わった。
「……は?」
空気が、一気に冷える。
「ちゃんと叱ってるよ」
「でも最近、なんでも許してる感じする」
言った瞬間。
“しまった”と思った。
唯ちゃんは静かに立ち上がる。
「……あなた、普段あんまり見れてないくせに」
その言葉が刺さる。
僕も言い返してしまう。
「俺だって仕事しながら頑張ってる!」
優月は、不安そうな顔で僕たちを見ていた。
その瞬間。
僕も唯ちゃんも、ハッとした。
唯ちゃんは小さく息を吐いて、優月を抱き上げる。
「……ごめんね」
その声が、少し震えていた。
夜。
優月を寝かせたあと。
リビングは静かだった。
僕は一人で洗い物をしながら、自己嫌悪でいっぱいになる。
唯ちゃんだって頑張ってる。
分かってるのに。
疲れると、余裕がなくなる。
しばらくして。
後ろから、小さな声。
「……ねえ」
振り返ると、唯ちゃんが立っていた。
少し泣いたあとみたいな顔。
僕はすぐ言う。
「ごめん」
唯ちゃんも同時に言った。
「ごめん」
二人で、思わず苦笑いする。
唯ちゃんはソファへ座りながら、小さく言った。
「最近、余裕なかった」
僕も隣に座る。
「俺も」
しばらく沈黙。
すると。
隣の部屋から、小さな足音。
トテトテトテ……
優月、登場。
寝ぼけ顔。
髪ぼさぼさ。
そして僕たちを見るなり。
「……けんか、だめ」
僕と唯ちゃん、固まる。
優月は眠そうな目で続けた。
「なかよく」
その一言で。
僕も唯ちゃんも、完全に涙腺が終わった。
唯ちゃんは優月を抱きしめる。
「……ごめんねぇ」
優月は状況をあまり分かってない顔で、
「うさぎ、みる?」
って絵本を持ってきた。
空気変えるの、天才だった。
その夜。
三人で布団に入る。
優月は僕と唯ちゃんの真ん中で、満足そうに眠っていた。
唯ちゃんは暗い部屋の中、小さく笑う。
「怒ってもさ」
「うん」
「やっぱり、あなたと家族でいたい」
僕は唯ちゃんの手を握る。
ケンカして。
失敗して。
時々、ぶつかって。
それでも。
“仲直りしたい”って思えるのが、家族なんだと。
僕たちは少しずつ、覚えていった。




