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つきよのうさぎ  作者:
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59/302

ケンカしても、あなたと家族でいたい!

年が明けて。

優月は二歳になった。

そして――

めちゃくちゃ喋るようになった。

朝からずっと喋ってる。

「ぱぱー!みてー!」

「ままぁー!うさぎー!」

「これなにー!?」

質問が無限。

僕と唯ちゃん、毎日ヘトヘト。

でも、可愛い。

ある休日。

僕は珍しく寝坊していた。

すると突然、顔に重み。

「ぐぇっ!?」

目を開けると。

優月、僕の上に座ってる。

しかも真顔。

「ぱぱ、おきて」

「……はい」

唯ちゃんは隣で大爆笑。

「起こし方が強い」

その後。

三人で朝ごはん。

優月は最近、“自分でやりたい期”に突入していた。

「ゆづきやる!」

スプーンを握る。

でも。

五秒後。

ヨーグルト、床へ着地。

僕と唯ちゃん、固まる。

優月、自信満々。

「できた!」

唯ちゃん、吹き出す。

「うん、床が食べたね」

そんな毎日。

笑うことは多かった。

でも。

ある夜。

久しぶりに、大きなケンカをした。

原因は、本当に小さなことだった。

僕が仕事で疲れて帰ってきて。

唯ちゃんも、締切前で余裕がなくて。

優月もイヤイヤ期で大暴れ。

ご飯をひっくり返し。

「いやぁぁぁ!!」

って泣き叫び。

部屋はカオス。

僕もついイライラしてしまった。

「ちょっと甘やかしすぎじゃない?」

その瞬間。

唯ちゃんの顔色が変わった。

「……は?」

空気が、一気に冷える。

「ちゃんと叱ってるよ」

「でも最近、なんでも許してる感じする」

言った瞬間。

“しまった”と思った。

唯ちゃんは静かに立ち上がる。

「……あなた、普段あんまり見れてないくせに」

その言葉が刺さる。

僕も言い返してしまう。

「俺だって仕事しながら頑張ってる!」

優月は、不安そうな顔で僕たちを見ていた。

その瞬間。

僕も唯ちゃんも、ハッとした。

唯ちゃんは小さく息を吐いて、優月を抱き上げる。

「……ごめんね」

その声が、少し震えていた。

夜。

優月を寝かせたあと。

リビングは静かだった。

僕は一人で洗い物をしながら、自己嫌悪でいっぱいになる。

唯ちゃんだって頑張ってる。

分かってるのに。

疲れると、余裕がなくなる。

しばらくして。

後ろから、小さな声。

「……ねえ」

振り返ると、唯ちゃんが立っていた。

少し泣いたあとみたいな顔。

僕はすぐ言う。

「ごめん」

唯ちゃんも同時に言った。

「ごめん」

二人で、思わず苦笑いする。

唯ちゃんはソファへ座りながら、小さく言った。

「最近、余裕なかった」

僕も隣に座る。

「俺も」

しばらく沈黙。

すると。

隣の部屋から、小さな足音。

トテトテトテ……

優月、登場。

寝ぼけ顔。

髪ぼさぼさ。

そして僕たちを見るなり。

「……けんか、だめ」

僕と唯ちゃん、固まる。

優月は眠そうな目で続けた。

「なかよく」

その一言で。

僕も唯ちゃんも、完全に涙腺が終わった。

唯ちゃんは優月を抱きしめる。

「……ごめんねぇ」

優月は状況をあまり分かってない顔で、

「うさぎ、みる?」

って絵本を持ってきた。

空気変えるの、天才だった。

その夜。

三人で布団に入る。

優月は僕と唯ちゃんの真ん中で、満足そうに眠っていた。

唯ちゃんは暗い部屋の中、小さく笑う。

「怒ってもさ」

「うん」

「やっぱり、あなたと家族でいたい」

僕は唯ちゃんの手を握る。

ケンカして。

失敗して。

時々、ぶつかって。

それでも。

“仲直りしたい”って思えるのが、家族なんだと。

僕たちは少しずつ、覚えていった。

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