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つきよのうさぎ  作者:
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56/302

ケンカしても一緒にいたいと、思えるのが家族なんだね!

家族旅行から帰ってきてからも。

山田家は相変わらず、にぎやかだった。

朝。

僕が仕事へ行こうとすると、優月が玄関までヨチヨチ走ってくる。

「ぱぱー!」

ぎゅっ。

足に抱きつかれる。

……行けない。

完全に行けない。

僕が困っていると、唯ちゃんが後ろで笑っている。

「先生、もう遅刻するよ」

「でも優月が……!」

優月はニコニコしながら、僕の靴を隠していた。

最近、“いたずら”を覚えたのだ。

しかも妙に賢い。

ある日なんて、僕の教員用の赤ペンを一本ずつ観葉植物へ刺していた。

ホラーだった。

唯ちゃんは笑いすぎて床に転がっていた。

「芸術的……っ!」

「どこが!?」

そんな毎日。

でも。

ずっと笑ってばかりじゃなかった。

ある夜。

優月が熱を出した。

小さな体で、苦しそうに息をしている。

僕も唯ちゃんも、不安でほとんど眠れなかった。

交代で抱っこして、水を飲ませて、何度も熱を測る。

夜中の三時。

疲れが限界に来ていた。

僕が「病院に電話した方がいいかな」と言うと、唯ちゃんが少し強い口調で言った。

「さっき相談したでしょ」

「でもまた熱上がってるし」

「少し様子見って言われたじゃん」

その声に、僕もついイライラしてしまう。

「俺だって心配なんだよ!」

部屋が、一瞬静まり返った。

優月の小さな寝息だけが聞こえる。

唯ちゃんは俯いたまま、何も言わなかった。

その姿を見て。

僕はすぐ後悔した。

疲れてるのは、唯ちゃんも同じなのに。

しばらくして。

唯ちゃんが、小さな声で言う。

「……ごめん」

その一言で、胸が苦しくなった。

僕は首を振る。

「違う。ごめん、俺」

唯ちゃんの目には、少し涙が浮かんでいた。

「怖かったの」

僕は黙って隣に座る。

唯ちゃんは、眠る優月の小さな手を握りながら続けた。

「この子が苦しそうだと、代わってあげたくなる」

その声が震えていた。

僕も、同じ気持ちだった。

僕はそっと唯ちゃんの肩を抱く。

「一緒に頑張ろう」

唯ちゃんは、小さく頷いた。

その時。

優月が寝ぼけながら、

「……ぱぱぁ……ままぁ……」

って呟いた。

僕と唯ちゃん、固まる。

そして次の瞬間。

二人とも泣きながら笑ってしまった。

「寝言で仲直りさせられた……」

「優月、強い……」

数日後。

優月の熱は下がった。

元気復活。

むしろ元気すぎた。

ソファへ登る。

降りる。

転ぶ。

笑う。

完全復活。

唯ちゃんは、そんな優月を抱きしめながら泣いていた。

「元気でよかったぁ……」

すると優月、唯ちゃんの涙を指で触って。

「ままぁ、えーん?」

って不思議そうな顔をする。

唯ちゃん、さらに泣く。

僕も笑いながら、二人を抱きしめた。

その夜。

優月が眠ったあと。

僕と唯ちゃんは、静かなリビングで温かいお茶を飲んでいた。

唯ちゃんがぽつりと言う。

「家族ってさ」

「うん」

「楽しいだけじゃないね」

僕は頷く。

「うん」

「でも」

唯ちゃんは、優しく笑った。

「ケンカしても、“一緒にいたい”って思えるのが家族なんだね」

僕はその言葉を聞きながら、唯ちゃんの手を握る。

昔の僕たちは。

孤独で、自分の居場所を探していた。

でも今は違う。

笑って、泣いて、ケンカして。

それでも最後には、同じ場所へ帰ってくる。

その温かさを、僕たちは少しずつ覚えていった。

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