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つきよのうさぎ  作者:
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222/302

夜。


子どもたちが寝たあと。


静かになったリビングで、私はそっとお茶を飲んでいた。


今日のあなたの顔を、何度も思い出していた。


朝。


「いってきます」って笑ってたけど。


やっぱり、少し無理してる顔だった。


たぶん。


昨日の失敗を、まだ引きずってる。


でも。


それでもちゃんと仕事へ向かうあなたを見て。


私は、すごいなって思ってた。


昔からそう。


あなたは、ちゃんと責任を感じる人だ。


人のことを考えて。


頑張りすぎるくらい頑張って。


だからこそ、落ち込む時は深く落ち込む。


でも。


家では、もっと弱音を吐いていいのにって思う。


朝の玄関。


結愛が、一生懸命作った折り紙を渡していた。


“ぱぱ だいじょうぶ!”


ぐちゃぐちゃの字。


でも。


あの子なりに、本気で励ましてた。


あなたが笑った時。


結愛、すごく安心した顔してたなぁ。


優月もそう。


あの子、最近少し大人びたけど。


今日はずっと、あなたのこと気にしてた。


「パパ、大丈夫かな」って。


子どもたちって、本当によく見てる。


夜。


あなたが帰ってきた瞬間。


私は、ちょっとホッとした。


玄関を開けた時の顔が。


昨日より少し柔らかかったから。


結愛が飛びついて。


優月が笑って。


あなたも笑って。


その光景を見てるだけで。


なんだか胸があたたかくなった。


夕ごはんのあと。


結愛が言った。


「きょうも、がんばれてえらい!」


私は思わず笑った。


でも。


あの言葉、すごく大事だと思った。


大人になると。


“頑張っただけ”じゃ褒められない。


結果とか。


成功とか。


ちゃんと出来たかとか。


そういうものばかり増えていく。


でも本当は。


毎日ちゃんと起きて。


怖くても仕事へ行って。


疲れて帰ってくるだけでも。


十分、頑張ってるんだと思う。


あなたは、きっと自分に厳しすぎる。


だから私は。


せめて家では。


「大丈夫だよ」って言える人でいたい。


夜更け。


私は、机の上に置いてある折り紙を見る。


“ぱぱ だいじょうぶ!”


少し曲がった文字。


その横には、優月のメモ。


“失敗しても、パパはパパだよ”


私は、小さく笑った。


この家、優しいなぁって思う。


たぶん。


あなたが優しいから。


子どもたちも、こうなったんだろうな。


寝室へ行くと。


あなたは、もう少し眠そうだった。


私は隣に座る。


すると。


あなたが小さく言った。


「今日、ちょっと救われた」


その声が、少し弱くて。


でも。


ちゃんと前を向こうとしてる声だった。


私は、そっと笑う。


「よかった」


それから。


あなたの肩にもたれた。


外は寒い冬の夜。


でも。


あなたの隣は、ちゃんとあたたかかった。


私は思う。


うまくいかない日も。


失敗する日も。


きっとこれから何度もある。


でも。


帰ってきて。


「おかえり」って言い合えるなら。


それだけで。


また頑張れる気がする。


山本家の灯りは。


今日も静かに、私たちを包んでいた。


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