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つきよのうさぎ  作者:
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223/302

夫婦って、こういう会話なのかもしれない。

次の日の朝。


私は、少し早く目が覚めた。


カーテンの隙間から入る、冬のやわらかい光。


隣を見る。


あなたは、まだ眠っていた。


昨日より少し穏やかな顔。


それを見て、私は少し安心する。


たぶん。


まだ完全には元気じゃない。


でも。


ちゃんと前を向こうとしてる。


それが分かったから。


私は静かにベッドを出る。


キッチンへ向かう。


お弁当を作る音。


お味噌汁の湯気。


朝の静かな時間。


昔は。


こういう毎日を、“普通”だと思っていた。


でも今は違う。


みんなが笑って起きてきて。


「おはよう」って言えて。


それだけで、十分幸せだと思う。


しばらくして。


後ろから、小さな足音。


振り返る。


結愛。


まだ半分寝てる顔。


髪もふわふわ。


でも。


開口一番。


「ぱぱ、げんき?」


やっぱり気にしてる。


私は笑う。


「うん。昨日より元気だと思うよ」


すると。


結愛は、安心したように頷いた。


それから。


小さい声で言う。


「よかったぁ……」


その顔が、すごく優しかった。


少しして。


あなたも起きてくる。


「おはよう」


昨日より、ちゃんと笑えてた。


私は、その笑顔を見るだけで嬉しくなる。


朝ごはんの時間。


優月が、何気なく学校の話をして。


結愛が、パンにジャム塗りすぎて騒いで。


あなたが苦笑いして。


いつもの山本家だった。


でも。


“いつも通り”って。


本当は、すごく大切なんだと思う。


その時。


あなたが、ふと私を見る。


「昨日、ありがとう」


小さい声。


でも。


ちゃんと届いた。


私は少し笑う。


「どういたしまして」


それだけ。


でも。


夫婦って、こういう会話なのかもしれない。


派手じゃなくていい。


ちゃんと隣にいること。


それが、一番大きい。


玄関。


今日も仕事へ向かうあなた。


昨日より背筋が伸びてる。


でも。


私は知ってる。


まだ少し、不安も残ってること。


だから。


靴を履くあなたに、そっと言う。


「今日も、無理しすぎないでね」


あなたは少し驚いた顔をして。


それから、優しく笑った。


「うん」


その返事が、なんだか嬉しかった。


ドアが閉まる。


静かな玄関。


でも。


今日は昨日みたいな心配は少なかった。


結愛が、私の服を引っ張る。


「ぱぱ、がんばれるかな」


私はしゃがんで、目線を合わせる。


そして笑った。


「大丈夫。パパ、強いから」


すると。


結愛は、胸を張る。


「ゆあのおうえんあるし!」


私は吹き出した。


本当に、この子は。


人を元気にする天才だ。


窓の外。


冬の空は冷たい。


でも。


山本家の中には、ちゃんとあたたかさがあった。


私は思う。


これからもきっと。


うまくいかない日がある。


泣きたくなる日もある。


でも。


みんなで「大丈夫」って言い合いながら。


少しずつ進んでいけたらいい。


そんなことを考えながら。


私は、冷めないうちにお味噌汁をよそった。


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