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つきよのうさぎ  作者:
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221/302

“失敗しても、パパはパパだよ”

次の日の朝。


僕は、少し早く目が覚めた。


昨日より、ほんの少しだけ気持ちが軽い。


リビングへ行くと。


唯ちゃんが朝ごはんを作っていた。


トーストの香り。


卵焼きの音。


いつもの朝。


唯ちゃんは僕を見ると、ふわっと笑った。


「おはよう」


その声だけで、少し安心する。


僕も笑い返す。


「おはよう」


しばらくして。


どたどたどたっ。


結愛、起床。


髪、大爆発。


まだ半分寝てる。


でも。


僕を見るなり、ぱっと顔が明るくなる。


「ぱぱ!げんきになった!?」


早い確認。


僕は笑う。


「うん。ちょっと元気になった」


すると。


結愛、ガッツポーズ。


「やったぁ!」


完全に自分の手柄。


その後。


優月も起きてくる。


眠そうな顔で席に座りながら、僕を見る。


「パパ、今日もお仕事?」


「うん」


すると。


優月は少し考えてから言った。


「じゃあ、“いってらっしゃいパワー”しなきゃね」


結愛、即参加。


「する!!」


なんだそれ。


朝ごはんのあと。


玄関。


僕が靴を履いていると。


結愛が、昨日の折り紙を持ってくる。


少しシワシワ。


でも。


大事そうに両手で持ってる。


「これ、もってく?」


僕は受け取る。


“ぱぱ だいじょうぶ!”


ぐちゃぐちゃの文字。


でも。


たぶん、世界で一番効く応援だった。


僕が笑うと。


結愛も笑った。


その時。


優月が、小さなメモを差し出す。


「これも」


見る。


そこには。


“失敗しても、パパはパパだよ”


短い言葉。


でも。


胸が熱くなる。


僕は、少し声が詰まりながら笑った。


「ありがとう」


唯ちゃんは、そんな僕を見ながら優しく言う。


「いってらっしゃい」


その声が、昨日よりもっとあたたかく聞こえた。


仕事へ向かう道。


空気はまだ冷たい。


でも。


昨日とは違った。


カバンの中には、結愛の折り紙。


ポケットには、優月のメモ。


そして。


背中には、家族の言葉。


職場へ着く。


昨日ミスした資料を見ながら、深呼吸する。


怖さはまだある。


落ち込みも、完全には消えてない。


でも。


“また頑張ろう”って思えた。


昼休み。


僕は、そっと折り紙を取り出す。


“ぱぱ だいじょうぶ!”


思わず笑ってしまう。


隣の同僚に見られた。


少し恥ずかしい。


でも。


なんだか誇らしかった。


夜。


家へ帰る。


ドアを開けた瞬間――


結愛。


「ぱぱー!!」


今日も全力。


優月も笑顔で「おかえり」。


唯ちゃんは、キッチンから顔を出して笑う。


「お疲れさま」


その瞬間。


僕は思った。


完璧じゃなくてもいい。


失敗してもいい。


この家には。


ちゃんと“帰ってこれる場所”があるんだって。


夕ごはんのあと。


結愛が突然言った。


「ぱぱ!」


「ん?」


結愛、胸を張る。


「きょうも、がんばれてえらい!」


数秒。


静寂。


優月、吹き出す。


唯ちゃんも笑ってる。


僕も、笑った。


でも。


少しだけ、泣きそうだった。


冬の夜。


山本家のリビングには。


今日も優しい笑い声が響いていた。


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