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つきよのうさぎ  作者:
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216/302

まいごのしろうさぎ

数日後。


リビングの机の上には――


完成間近の絵本が並んでいた。


タイトルは。


『まいごのしろうさぎ』


表紙には。


小さな白いうさぎが、森の中で空を見上げている絵。


優しい色。


あたたかい絵。


唯ちゃんらしい絵本だった。


結愛は、毎日その続きを楽しみにしていた。


朝起きるたび。


「つづきは!?」


連載漫画みたいになってる。


その日も。


結愛は、唯ちゃんの隣にぺたっと座っていた。


真剣。


唯ちゃんがページを描くたび。


「わぁ……」


「かわいい……」


リアクションが素直すぎる。


一方。


優月も気になっていた。


学校から帰ると、まず絵本を見る。


咲良ちゃんまで遊びに来て、一緒に読んでいる。


もう読者が増えてる。


その時。


咲良ちゃんが、静かに言った。


「唯さんの絵本って、“安心する”感じする」


優月も頷く。


「わかる」


唯ちゃん、少し照れる。


でも。


嬉しそうだった。


夕方。


ついに最後のページ。


小さな白いうさぎが、家へ帰るシーン。


窓から灯り。


待っている家族。


そして。


安心したように笑う、うさぎ。


唯ちゃんは、最後の色をゆっくり塗る。


カリカリ。


静かな音。


結愛、息を止めて見てる。


それから――


唯ちゃんが、小さく笑った。


「できた」


その瞬間。


結愛、拍手。


「わぁぁぁ!!」


優月も笑顔。


咲良ちゃんも、ぱあっと表情が明るくなる。


みんなでソファに集まる。


そして。


唯ちゃんの読み聞かせが始まった。


「むかしむかし、ちいさなしろうさぎがいました――」


リビングが静かになる。


みんな、ちゃんと聞いてる。


結愛なんて、途中で少し泣きそう。


特に。


うさぎが“帰る場所”を見つける場面。


そこが、すごく優しかった。


読み終わったあと。


少しだけ静かになる。


それから。


結愛が、唯ちゃんにぎゅっと抱きついた。


「だいすき」


その声が、小さかった。


唯ちゃんも、優しく抱きしめ返す。


優月は、静かに笑っていた。


そして。


ぽつりと言う。


「ママ、また絵本描いてよ」


唯ちゃんは、少し驚いて。


それから。


嬉しそうに笑った。


「うん」


その返事が、とても自然だった。


夜。


みんなが寝静まったあと。


僕は、机の上の絵本をもう一度見る。


『まいごのしろうさぎ』


その最後のページには。


あたたかい家の絵。


笑っている家族。


そして。


小さく書かれていた言葉。


“おかえり”


僕は思う。


たぶん。


唯ちゃんは。


この家を描いていたんだろうなって。


迷っても。


疲れても。


ちゃんと帰れる場所。


笑って「おかえり」って言ってくれる場所。


山本家の夜は、今日も静かだった。


でも。


その静けさは、とても優しい音がしていた。


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