『おかえり、ぼうけん』
キャンプから帰ってきた次の日。
山本家は――
静かだった。
……いや。
正確には。
みんな、ちょっとだけ電池切れ。
結愛なんて。
ソファに転がりながら言った。
「きのう、たのしすぎた……」
完全燃焼。
ひまりちゃんも遊びに来ていたけど。
同じ状態。
二人並んでゴロゴロ。
まるで干された猫。
優月と咲良ちゃんは、昨日撮った写真を見返していた。
焚き火。
星空。
変顔の結愛。
プリンぬいぐるみ。
見るたび笑ってる。
その時。
一枚の写真で、二人が止まる。
朝の森を歩いている写真。
優月と咲良ちゃんが、並んで笑っていた。
自然な笑顔。
咲良ちゃんが、小さく笑う。
「なんか、いい写真」
優月も、少し照れながら頷く。
「うん」
その空気が、すごく穏やかだった。
午後。
結愛とひまりちゃん、復活。
早い。
そして突然。
「キャンプごっこしよう!!」
始まった。
リビングにテント。
毛布。
クッション。
もう秘密基地のプロ。
優月、笑いながら手伝う。
咲良ちゃんは、紙で“キャンプのしおり”を作り始めた。
細かい。
しかも上手い。
結愛、感動。
「ほんものだ……」
その後。
みんなで“おうちキャンプ”開始。
ランタン風ライト。
お菓子。
ジュース。
そして――
謎の怖い話大会。
結愛、真剣な声。
「あるひ……ぷりんが、きえました……」
全然怖くない。
ひまりちゃん、笑い崩れる。
優月なんて涙出てる。
咲良ちゃんも肩震わせてる。
でも。
その笑い声が、本当に楽しそうだった。
夜。
少し静かになった頃。
結愛が、急に言った。
「またみんなでキャンプしたい」
ひまりちゃんも頷く。
「つぎは、もっとながく!」
優月は、その二人を見ながら笑った。
「また行こうね」
咲良ちゃんも優しく頷く。
その返事が。
“これからも一緒”みたいに聞こえた。
寝る前。
優月は、スケッチブックを開く。
おうちテント。
笑うみんな。
ランタンの光。
そして。
寄り添って眠そうにしてる、結愛とひまりちゃん。
タイトルは――
『おかえり、ぼうけん』
その絵は。
今までで一番、“帰ってくる場所”のあたたかさが描かれていた。
窓の外では、秋の風が少しだけ吹き始めていた。
でも。
山本家の毎日は、まだまだ夏の続きを抱きしめていた。




