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つきよのうさぎ  作者:
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212/302

『またひとつ、たからもの

キャンプ二日目の朝。


まだ空が少し白い時間。


鳥の声。


川の音。


冷たい空気。


そんな中――


結愛だけが、異常に早起きだった。


テントから、もぞもぞ出てくる。


髪ボサボサ。


寝袋引きずってる。


そして。


外を見た瞬間。


「わぁ……」


朝露。


朝日。


少し霧がかかった森。


全部がキラキラしていた。


その声で。


ひまりちゃんも起きる。


「……あさ?」


二人で、ぼーっと空を見る。


静かな時間。


すると。


結愛、小さく言った。


「キャンプ、そらがちかいね」


その言葉が、なんだか綺麗だった。


しばらくして。


大人たちも起き始める。


唯ちゃんが、温かいココアを配る。


結愛、両手で持ちながら幸せそう。


「ほっとする……」


どこで覚えた。


朝ごはんは――


ホットサンド。


外で食べると、なんでこんなに美味しいんだろう。


結愛なんて。


「カリカリまほう」


完全に気に入ってる。


そのあと。


みんなで森を散歩することに。


小さな道。


木漏れ日。


虫の声。


ひまりちゃんが、どんぐりを見つける。


「みて!」


結愛も拾う。


「まほうのたね!」


また始まった。


でも。


二人は本当に楽しそうだった。


その後ろを。


優月と咲良ちゃんが並んで歩く。


ゆっくり。


静かに。


咲良ちゃんが言った。


「優月ちゃんって、絵描いてる時すごく楽しそうだよね」


優月、少し照れる。


「好きだからかな」


咲良ちゃんは笑った。


「いいなぁ。“好き”があるのって」


優月は少し考えてから言う。


「咲良ちゃんも、絵好きじゃん」


すると。


咲良ちゃんは、小さく笑った。


「うん。でも最近、また前より好きになった」


優月が聞く。


「なんで?」


咲良ちゃんは、少し照れながら言った。


「優月ちゃんと話すようになってから」


その瞬間。


優月の顔が少し赤くなる。


でも。


すごく嬉しそうだった。


昼前。


広場へ到着。


結愛とひまりちゃん。


即、走る。


シャボン玉開始。


風に乗って飛んでいく。


太陽の光でキラキラしていた。


結愛が笑う。


ひまりちゃんも笑う。


その声が、森に広がる。


僕は思う。


こういう時間って。


たぶん、あとから思い出になるんだろうなって。


帰る前。


みんなで記念写真。


テント。


森。


青空。


笑顔。


結愛は、プリンぬいぐるみまで持ってきていた。


完全参加。


帰り道。


車の中。


結愛とひまりちゃん、秒で寝る。


遊びきった顔。


優月は、窓の外を見ながら静かに笑っていた。


咲良ちゃんも、隣で少し眠そう。


でも。


二人とも、どこか満たされた顔をしていた。


夜。


家に帰って。


優月は、少し疲れたままスケッチブックを開く。


朝の森。


ホットサンド。


どんぐり。


シャボン玉。


そして。


並んで歩く、自分と咲良ちゃん。


タイトルは――


『またひとつ、たからもの』


その絵は。


今までで一番、“大切な時間”が詰まっていた。


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