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『ほしぞらキャンプ

九月のはじめ。


少しだけ涼しい風が吹き始めた頃。


山本家では――


大荷物大会が開催されていた。


テント。


寝袋。


クーラーボックス。


お菓子。


結愛のおもちゃ。


なぜかしゃもじ。


今日は。


みんなでキャンプ。


ひまりちゃんと咲良ちゃん一家も一緒だった。


結愛、朝から大興奮。


「やまのひみつきち!!」


だいたい合ってる。


キャンプ場到着。


森の匂い。


川の音。


広い空。


結愛とひまりちゃん、即走り出しそうになる。


僕と唯ちゃん、即止める。


「準備してから!」


キャンプあるある。


まずはテント設営。


大人たちが頑張る。


……はずだった。


でも。


結愛とひまりちゃんも参加。


「ここもつ!!」


「ひっぱる!!」


結果。


ロープぐちゃぐちゃ。


優月、笑いすぎて座り込む。


咲良ちゃんも笑ってる。


でも。


みんなで作る時間って、なんだか楽しかった。


テント完成。


結愛、中へ飛び込む。


「おうちだ!!」


秘密基地認定。


ひまりちゃんも入る。


数秒後。


中から笑い声。


たぶんもう冒険始まってる。


午後。


川辺を散歩。


優月と咲良ちゃんは、並んで歩いていた。


風が気持ちいい。


咲良ちゃんが、小さく言う。


「なんか、キャンプって特別だね」


優月も頷く。


「時間がゆっくりな感じする」


その言葉通りだった。


スマホより。


空を見て。


音楽より。


虫の声を聞く。


そんな時間。


夕方。


晩ごはん準備。


カレー。


定番。


でも。


結愛たちも手伝いたい。


結果。


にんじんの形が全部バラバラ。


ひまりちゃんのは星型。


結愛のは……謎。


優月、大笑い。


咲良ちゃんが言う。


「これは芸術作品だね」


優しい。


カレー完成。


外で食べる。


すごく美味しい。


結愛なんて。


「キャンプのカレー、さいきょう」


完全同意。


夜。


焚き火。


パチパチ音が鳴る。


炎がゆらゆら揺れる。


結愛とひまりちゃんは、マシュマロ焼きに挑戦。


真剣。


でも。


結愛。


近づけすぎる。


燃える。


「あぁぁぁ!!」


優月、爆笑。


咲良ちゃん、笑いながら新しいの渡してる。


そのあと。


みんなで星を見る。


空がすごかった。


星だらけ。


結愛、見上げたまま呟く。


「そら、ひろい……」


その声が小さかった。


ひまりちゃんも、静かに空を見ている。


優月と咲良ちゃんも並んで座っていた。


咲良ちゃんが言う。


「こういう時間、ずっと覚えてそう」


優月、ゆっくり頷く。


「うん」


その横顔が、少し大人っぽかった。


寝る前。


テントの中。


結愛とひまりちゃん、まだ元気。


「もし、くまきたら?」


「まほうでたおす!」


物騒。


でも。


数分後には寝落ち。


早い。


寝顔が、すごく平和だった。


外では、虫の声。


少し冷たい夜風。


焚き火の残り香。


優月は、ランタンの光の中でスケッチブックを開く。


テント。


焚き火。


星空。


笑うみんな。


そして。


眠っている、小さな二人の魔法少女。


タイトルは――


『ほしぞらキャンプ』


その絵は。


今までで一番、静かで優しかった。


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