夏休みの戦い
八月後半。
夏休み最大の敵が、ついに現れた。
――宿題。
リビングの机には。
ドリル。
作文。
自由研究。
読書感想文。
大量。
結愛、見た瞬間に言った。
「むり」
早い。
ひまりちゃんも、静かに固まってる。
完全に戦意喪失。
一方。
優月と咲良ちゃんは、比較的落ち着いていた。
……と思ったら。
読書感想文のページを見て、二人とも止まる。
優月、小声。
「これ、何書けばいいの……」
咲良ちゃん、真顔。
「“面白かったです”じゃダメかな」
ダメ。
ということで。
山本家・夏休み宿題大会開催。
まず。
結愛とひまりちゃん。
足し算。
でも。
途中から問題文を読み始める。
「りんごがさんこ……」
「おいしそう」
集中しろ。
優月、大笑い。
その横で。
咲良ちゃんは自由研究を考えていた。
テーマ。
“かき氷の溶ける速さ”。
完全に夏。
優月も乗ってくる。
「じゃあ、味によって違うのかな」
始まった。
好きなもの絡むと強い。
一方。
結愛たち。
漢字練習中。
でも。
結愛。
“海”を書こうとして――
全部プリンになる。
なぜ。
ひまりちゃん、笑い崩れる。
結愛、真顔。
「これは、ぷりんのうみ」
意味不明。
昼過ぎ。
みんな少し疲れてきた。
すると。
唯ちゃんが、スイカを持ってくる。
「休憩しよっか」
その瞬間。
結愛、復活。
「すいかぁぁ!!」
元気ゲージ単純。
みんなでスイカを食べる。
夏の匂い。
扇風機の風。
笑い声。
その時間が、なんだかすごく“夏休み”だった。
その時。
咲良ちゃんが、優月のノートを見る。
そこには。
読書感想文の下書き。
でも。
ただの感想じゃなかった。
“登場人物の気持ち”とか。
“読んで感じたこと”が、優しく書かれていた。
咲良ちゃん、少し驚く。
「優月ちゃんって、人の気持ち見るの上手だね」
優月、少し照れる。
「そうかな……」
でも。
嬉しそうだった。
その頃。
結愛。
スイカの種飛ばし開始。
宿題どこいった。
夕方。
やっと少し進んだ宿題を見て。
ひまりちゃんが言う。
「終わる気がしてきた!」
結愛も頷く。
「われわれ、つよい」
急にチーム感。
そのあと。
自由研究の話になる。
結愛は、悩んだあと言った。
「ゆあ、“まほうしょうじょのけんきゅう”する」
先生困る。
優月、笑いながら言う。
「どんな研究?」
結愛、胸を張る。
「どうしたら、みんなえがおになるか!」
数秒。
リビングが静かになる。
それから。
咲良ちゃんが、優しく笑った。
「……それ、いい研究かも」
優月も頷いていた。
たぶん。
結愛は、ふざけてるようで。
ちゃんと大事なことを見てるんだと思う。
夜。
宿題は、まだ終わってない。
でも。
机の周りには、笑い声がいっぱいだった。
優月は、今日の絵を描く。
ドリル。
スイカ。
悩むみんな。
そして。
真ん中で、“ぷりんのうみ”を描いてる結愛。
タイトルは――
『なつやすみのたたかい』
その絵は。
ぐちゃぐちゃで。
でも。
すごく楽しそうだった。




