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秘密基地の夏

数日後。


夏休みも、少し後半に入っていた。


でも。


結愛たちの元気は、まだ減らない。


その日も。


ひまりちゃんと咲良ちゃんが遊びに来ていた。


リビングは、すでに賑やか。


結愛とひまりちゃんは――


床にクッションを並べていた。


真剣。


優月が聞く。


「なに作ってるの?」


結愛、振り向く。


「ひみつきち!」


始まった。


しかも。


今回はただの秘密基地じゃない。


テーマ。


“魔法少女カフェ”。


情報量が多い。


クッションが壁。


毛布が屋根。


ぬいぐるみが店員。


そして。


しゃもじが看板。


万能すぎる。


ひまりちゃんも本気だった。


「ここ、おかしコーナー!」


「ここ、まほうのへや!」


どんどん広がる。


優月と咲良ちゃんは、笑いながら手伝っていた。


すると。


咲良ちゃんが、小さく言う。


「なんか、小さい頃思い出すなぁ」


優月も頷く。


「わたしも」


それから少し笑う。


「段ボールとかで家作ってた」


「やってた!」


二人、また盛り上がる。


好きなものだけじゃなく。


“懐かしい”まで共有できる友達になってきていた。


しばらくして。


秘密基地完成。


結愛、胸を張る。


「かんせい!!」


でも。


どう見ても入口が小さい。


僕、入れない。


すると。


結愛が言う。


「ぱぱは、おきゃくさん」


外待機だった。


中では。


魔法少女カフェ開店。


結愛とひまりちゃんが店員。


優月は、“ケーキ担当”。


咲良ちゃんは、“メニュー係”。


本格的。


しかも。


咲良ちゃん、即席でメニュー表を描き始める。


絵が上手い。


優月、感動してる。


「かわいい……!」


その横で。


結愛たち。


フェルトのおもちゃケーキを並べる。


「いちごまほうけーきです!」


「こちら、にこにこパフェ!」


名前がふわっとしてる。


僕と唯ちゃんは、お客さん役。


注文する。


すると。


結愛が、超丁寧に運んでくる。


……途中で転ぶ。


ガタン。


でも。


ぬいぐるみケーキなので無傷。


優月、笑い崩れる。


結愛、立ち上がる。


「これは、えんしゅつ」


強い。


夕方。


秘密基地の中で、みんな少しゆっくりしていた。


夏の光が、毛布の隙間から入る。


その空気が、なんだか特別だった。


その時。


ひまりちゃんが、ぽつりと言う。


「夏休み、終わってほしくないなぁ」


少し静かになる。


結愛も、小さく頷く。


「ずっとあそびたい」


優月は、その二人を見ながら笑った。


「でも、また遊べるよ」


咲良ちゃんも頷く。


「うん。また秘密基地作ろ」


その言葉に。


結愛の顔が、ぱあっと明るくなる。


「つぎは、おしろにする!!」


規模拡大。


そのあと。


みんなで秘密基地の中から夕焼けを見る。


オレンジ色。


少しずつ暗くなる空。


結愛が、小さく言った。


「ともだちって、たのしいねぇ」


その声が。


今日一番、優しかった。


夜。


優月は、スケッチブックを開く。


毛布の秘密基地。


笑うみんな。


手作りメニュー。


小さなランプ。


そして。


夏の夕焼け。


タイトルは――


『ひみつきちのなつ』


その絵は。


見てるだけで、胸があったかくなる絵だった。


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