夏の甘い時間
八月の暑い午後。
蝉が本気だった。
外に出た瞬間、暑い。
そんな中――
結愛が、ソファでぐでーっとしていた。
「……とける」
魔法少女、夏バテ。
ひまりちゃんも遊びに来ていたけど。
同じ状態。
床にぺたーん。
「アイスになりたい……」
進化した。
その時。
唯ちゃんが笑いながら言った。
「じゃあ、かき氷食べに行く?」
数秒静止。
次の瞬間。
結愛、復活。
「いくぅぅぅ!!」
早い。
ひまりちゃんも飛び起きる。
優月と咲良ちゃん、大笑い。
向かったのは。
昔ながらの小さな甘味処。
木の看板。
風鈴。
ゆっくり回る扇風機。
夏そのものみたいなお店だった。
店へ入った瞬間。
結愛、ショーケースに張りつく。
「でかっ!!」
かき氷が山。
しかも。
いちご。
メロン。
ブルーハワイ。
抹茶。
白くま。
種類いっぱい。
結愛、完全に迷子。
「えらべない……」
人生最大の難問。
ひまりちゃんも悩んでる。
その横で。
優月と咲良ちゃんは、メニューを見ながら笑っていた。
「夏って感じだね」
「うん」
その空気が、なんだか穏やかだった。
そして。
注文。
結愛――
“レインボーかき氷”。
色が多い。
ひまりちゃん――
“いちごミルク”。
優月――
“宇治抹茶”。
ちょっと大人。
咲良ちゃん――
“白桃ミルク”。
なんか似合う。
数分後。
運ばれてきた瞬間――
結愛、目が完全に星。
「にじぃぃぃ!!」
山。
完全に山。
しかも。
上にさくらんぼ。
結愛、感動してる。
その時。
ひまりちゃんが一口食べて言った。
「つめたぁぁぁ!!」
頭キーン。
結愛も食べる。
数秒後。
固まる。
「……あたまいたい」
優月、吹き出す。
咲良ちゃんも笑ってる。
でも。
次の瞬間にはまた食べる。
学習しない。
そのあと。
結愛とひまりちゃん。
舌を見せ合う。
「みて!」
「ピンク!」
「ゆあ、あお!!」
完全に子ども。
優月、大爆笑。
その時。
咲良ちゃんが、優月のかき氷を見ながら言った。
「抹茶、なんか大人っぽいね」
優月、少し照れる。
「最近ちょっと好きになった」
咲良ちゃんが笑う。
「優月ちゃん、なんか前よりお姉さんになった気がする」
その言葉に。
優月は、少しびっくりしていた。
でも。
どこか嬉しそうだった。
店の外。
風鈴が鳴る。
チリン。
夏の音。
結愛は、かき氷を食べながら突然言った。
「しあわせって、つめたいねぇ」
みんな、一瞬静か。
そして。
優月が吹き出した。
「名言っぽい!」
でも。
なんだか分かる気がした。
暑い日に食べるかき氷。
友達。
笑い声。
そういう小さな時間って。
ちゃんと幸せなんだ。
帰り道。
結愛とひまりちゃんは、まだ魔法少女ごっこ中。
「ひょうがまほう!!」
「アイスビーム!!」
完全にかき氷影響。
その後ろを。
優月と咲良ちゃんが並んで歩く。
笑いながら話してる。
その姿が、とても自然だった。
夜。
優月は、今日の絵を描いていた。
レインボーかき氷。
青い舌の結愛。
笑うひまりちゃん。
そして。
並んで笑う、自分と咲良ちゃん。
タイトルは――
『なつのあまいじかん』
その絵は。
見てるだけで、少し涼しくなるみたいだった。




