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夏の光

八月。


夕方。


空が少しオレンジ色になり始めた頃。


山本家は、なんだかソワソワしていた。


今日は――


みんなで花火大会へ行く日。


結愛、朝から浴衣。


早い。


しかも。


頭には魔法少女リボン。


和と魔法の融合。


優月が笑う。


「結愛、今日も変身してるの?」


結愛、真顔。


「はなびのまほうしょうじょ」


季節限定だった。


しばらくして。


ひまりちゃんと咲良ちゃんが到着。


ひまりちゃんも浴衣。


しかも。


星柄。


結愛、大興奮。


「きらきら!!」


一方。


咲良ちゃんと優月。


お互いの浴衣を見て、少し照れながら笑う。


「似合ってる」


「そっちも」


なんだか空気が柔らかい。


会場へ向かう道。


屋台。


提灯。


人の声。


夏の匂い。


結愛とひまりちゃんは、もうお祭りモード全開。


「あめ!!」


「りんご!!」


「わたあめぇぇ!!」


移動速度が速い。


僕と唯ちゃん、必死。


まずは屋台巡り。


チョコバナナ。


たこ焼き。


かき氷。


結愛、口の周りがシロップだらけ。


優月、大笑い。


その横で。


咲良ちゃんが、優月に小さく聞く。


「優月ちゃんって、将来ほんとにケーキ屋さんやりたいの?」


優月は、少し驚く。


でも。


静かに頷いた。


「うん。まだ夢だけど」


少し照れながら笑う。


すると。


咲良ちゃんも笑った。


「絶対、かわいいお店になる」


その言葉に。


優月の顔が、少し赤くなる。


でも。


嬉しそうだった。


夜。


花火が始まる。


ドォン――!!


空いっぱいの光。


赤。


青。


金色。


結愛とひまりちゃん、完全に見上げたまま固まる。


「わぁぁぁ……」


その声が、小さかった。


たぶん。


本当に綺麗な時って、人は静かになるんだ。


次々上がる花火。


光がみんなの顔を照らす。


優月は、その景色を静かに見ていた。


その横で。


咲良ちゃんが、小さく言う。


「夏って、終わるの早いね」


優月も、少し寂しそうに笑う。


「うん……」


結愛たちの笑い声。


屋台の灯り。


花火の音。


全部が、“今しかない時間”みたいだった。


その時。


結愛が突然、しゃもじを掲げる。


持ってきてた。


「はなびまほう!!」


周りの子、ちょっと見る。


優月、吹き出す。


でも。


ひまりちゃんもステッキを掲げた。


「きらきらパワー!」


二人、大笑い。


その光景を見ながら。


僕は思う。


子どもの頃の夏って。


きっと。


こういう瞬間で出来てるんだろうなって。


花火大会の帰り道。


結愛は、ひまりちゃんと手を繋いで歩いていた。


少し眠そう。


でも。


ずっと笑ってる。


優月と咲良ちゃんは、後ろをゆっくり歩いていた。


好きな絵の話。


学校の話。


将来の話。


少しずつ。


ちゃんと“友達”になっていく空気があった。


帰宅後。


結愛、即寝落ち。


しかも。


しゃもじ握ったまま。


優月、笑いながら毛布をかける。


それから。


静かにスケッチブックを開いた。


夜空。


大きな花火。


笑う結愛とひまりちゃん。


そして。


少し離れて並ぶ、自分と咲良ちゃん。


タイトルは――


『なつのひかり』


その絵は。


今までで一番、優しい色をしていた。


窓の外には、まだ少し花火の音。


山本家の夏は。


今日も、きらきら輝いていた。


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