友達の時間
夏休みの午後。
今日は――
“山本家おうち集合の日”。
結愛は、朝からそわそわ。
理由。
ひまりちゃんと咲良ちゃんが遊びに来る。
しかも。
「おかしづくりする!」
結愛、大興奮。
優月も、朝から少し落ち着かない。
でも。
どこか嬉しそうだった。
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
結愛、ダッシュ。
危ない。
ドアを開けると。
ひまりちゃんが元気よく言う。
「ゆあぴかー!!」
結愛も負けない。
「ひまりんー!!」
謎の呼び名完成。
その横で。
咲良ちゃんが少し笑いながら手を振る。
優月も笑顔になる。
「いらっしゃい!」
その空気が、すごく自然だった。
リビング。
まず始まったのは――
魔法少女会議。
結愛とひまりちゃん、真剣。
「なつやすみは、わるものおおい」
「うみとかいるよね」
どんな世界。
その横で。
優月と咲良ちゃんは、ケーキ雑誌を見ていた。
「このフルーツタルトかわいい!」
「この色使い好き」
話が止まらない。
好きなものが近いって。
やっぱり嬉しいんだなって思う。
午後。
みんなでクッキー作り開始。
結愛とひまりちゃんは、生地係。
……だったはず。
数分後。
小麦粉まみれ。
白い。
優月、爆笑。
咲良ちゃんまで笑ってる。
結愛、真顔。
「まほうのけむり」
絶対違う。
ひまりちゃんも負けてない。
型抜きをしながら言う。
「これは、スターライトハート型!」
名前が長い。
結愛も対抗。
「これは、ぷりんぎん!!」
何それ。
でも。
二人は本当に楽しそうだった。
その時。
咲良ちゃんが、優月の描いた“ゆあぴか絵本”を見つける。
ページをめくる。
静かに読む。
それから。
ぽつりと言った。
「……優月ちゃんの絵、あったかいね」
優月、少し驚く。
咲良ちゃんは続ける。
「見てると、“ここに入りたい”って思う」
その言葉に。
優月の顔が、少し赤くなる。
でも。
すごく嬉しそうだった。
誰かに“好き”をちゃんと見てもらえるって。
特別なことなんだ。
夕方。
焼き上がったクッキーを並べる。
星。
ハート。
うさぎ。
そして。
大量の謎生物。
結愛とひまりちゃん、自信満々。
「しんさく!」
優月、笑い崩れる。
みんなで食べる。
甘い。
ちょっと形変。
でも。
すごく楽しい味。
その時。
ひまりちゃんが、突然言った。
「ねぇ、みんなで“まほうカフェ”やりたい!」
結愛、立ち上がる。
「やるぅぅぅ!!」
早い。
咲良ちゃんも笑う。
「じゃあわたし、メニュー描く」
優月も目を輝かせる。
「わたし、ケーキ作る!」
その瞬間。
四人が同時に笑った。
僕と唯ちゃんは、その様子を少し離れて見ていた。
唯ちゃんが、小さく言う。
「優月、すごく楽しそう」
僕も頷く。
前より。
笑う回数が増えた。
話す時間も増えた。
“好きなものを一緒に楽しめる友達”って。
人をすごく元気にするんだなって思った。
帰る時間。
結愛たちは、玄関でまだ話してる。
「つぎいつ!?」
「まほうカフェする!」
「ケーキいっぱい!」
「わるもの役いる?」
最後だけ不穏。
帰ったあと。
優月は、静かにスケッチブックを開いた。
今日の絵。
笑うみんな。
粉まみれ。
クッキー。
そして。
並んで笑う、自分と咲良ちゃん。
タイトルは――
『ともだちのじかん』
その絵は。
今までで一番、“楽しさ”が詰まっていた。
窓の外では、夏の夕焼け。
山本家の毎日は。
今日も少しずつ、優しく広がっていた。




