まほうしょうじょ 楽しいね
数日後。
朝から結愛は、ソワソワしていた。
時計を見る。
窓を見る。
また時計を見る。
落ち着きゼロ。
理由はもちろん――
ひまりちゃんと遊ぶ約束。
しかも今日は、“魔法少女合同任務”。
本人たちがそう呼んでる。
優月が笑いながら聞く。
「今日は何するの?」
結愛、真剣。
「まちのへいわをまもる」
壮大。
待ち合わせ場所は、公園。
そこへ行くと――
ひまりちゃん、いた。
しかも今日は。
新装備。
星のステッキ。
マント。
キラキラ髪飾り。
完成度が高い。
結愛、目を丸くする。
「つよそう……」
ひまりちゃんも、結愛を見て笑った。
「ゆあぴかも!」
今日は。
しゃもじにリボン追加。
アップデート済み。
そして。
二人、同時にポーズ。
「へんしんっ!!」
周りの小さい子たち、ちょっと見てる。
でも。
本人たちは完全に本気。
まず最初の任務。
“泣いてる子を助ける”。
すると。
本当に、小さい男の子が泣いていた。
転んで膝を擦りむいたらしい。
結愛とひまりちゃん、顔を見合わせる。
そして。
走る。
結愛がしゃもじを掲げる。
「だいじょうぶびーむ!!」
ひまりちゃんも言う。
「きらきらヒール!」
優月、吹き出しそうになるのを我慢してる。
でも。
二人は、本当に一生懸命だった。
ひまりちゃんが絆創膏を渡し。
結愛が隣で変顔。
すると。
男の子、少し笑う。
その瞬間。
結愛、小さくガッツポーズ。
「なおった!」
完全に魔法成功扱い。
そのあと。
公園でシャボン玉遊び。
二人で走り回る。
笑う。
転ぶ。
また笑う。
でも。
途中で。
風が強く吹いた。
ひまりちゃんの帽子が飛ぶ。
「あっ!」
池の方へ転がる。
危ない。
その瞬間。
結愛、ダッシュ。
全力。
しゃもじ持ったまま。
ギリギリで帽子キャッチ。
そして――
勢い余って自分が転ぶ。
芝生へゴロン。
数秒静止。
優月、爆笑。
ひまりちゃんも笑ってる。
でも。
結愛は、帽子をぎゅっと抱えて言った。
「まもった……」
その顔が、ちょっと誇らしそうだった。
ひまりちゃんは、帽子を受け取りながら笑う。
「ありがとう、ゆあぴか」
結愛、照れる。
耳まで赤い。
そのあと。
二人でベンチに座る。
ジュース飲みながら、空を見る。
ひまりちゃんが聞いた。
「ゆあぴかって、なんで魔法少女好きなの?」
結愛は、少し考える。
それから。
小さく言った。
「みんな、えがおになるから」
その答えを聞いて。
ひまりちゃんは、優しく笑った。
「わたしも」
その瞬間。
二人の間に流れる空気が、なんだか少し大人っぽかった。
帰る時間。
夕日が公園をオレンジ色にしている。
結愛は、少し寂しそう。
でも。
ひまりちゃんが言った。
「次、“夜の魔法少女ごっこ”しない?」
結愛、固まる。
数秒後。
「やるぅぅぅ!!」
声デカい。
優月、笑い崩れる。
帰り道。
結愛は、今日の話をずっとしていた。
「ひまりちゃん、つよかった!」
「ぼうしまもれた!」
「ゆあぴか、かつやくした!」
その横顔が、本当に嬉しそうだった。
夜。
優月は、スケッチブックを開く。
今日の絵。
シャボン玉。
夕日。
帽子。
笑ってる二人の魔法少女。
タイトルは――
『ゆあぴかと、きらきらのなかま』
その絵は。
今までで一番、“友達”って感じがした。
その時。
結愛が眠そうに言った。
「まほうしょうじょ、たのしいねぇ……」
優月は、優しく笑う。
「うん。すごくね」
窓の外では、夏の夕焼け。
山本家の毎日は、今日もキラキラしていた。




