魔法少女 イベント
映画を見た数日後。
結愛は、朝からソワソワしていた。
理由は――
ショッピングモールで開催される、
『キラリン☆ミラクルプリズムハート ふれあい魔法フェスティバル』
長い。
しかも。
“本物の魔法少女ショー”が来るらしい。
結愛、完全に落ち着かない。
朝ごはん中も。
「あとなんぷん!?」
五分おき。
優月、笑いながら言う。
「まだ二時間あるよ」
結愛、絶望。
「ながい……」
人生最大レベルの待機時間。
そして。
出発。
もちろん結愛は、完全変身済み。
しゃもじ。
リボン。
タオルマント。
さらに今日は――
優月手作りの“ゆあぴか変身カード”も首から下げている。
本人、超誇らしげ。
会場へ着くと。
もうキラキラ空間だった。
大きなポスター。
音楽。
魔法ステッキのおもちゃ。
衣装を着た子どもたち。
結愛、目が完全に星。
「まほうのくにだ……」
そのまま走りそうになる。
僕、捕獲。
まずは、スタンプラリー。
結愛、本気。
「つぎどこ!?」
移動速度が異常。
優月は、その横で楽しそうに笑っていた。
途中。
“魔法ステッキ体験コーナー”。
結愛、即参加。
スタッフのお姉さんが優しく言う。
「じゃあ、一緒に変身してみようか!」
結愛、緊張。
そして――
「せーの!」
『キラリン☆ミラクルチェーンジ!』
周りの子どもたちと一緒にポーズ。
結愛、全力。
気合いが一人だけ違う。
優月、笑いすぎて写真ブレてる。
その時。
事件。
結愛。
テンション上がりすぎて回転。
転ぶ。
しかも。
しゃもじ飛ぶ。
空中一回転。
近くのお父さんがナイスキャッチ。
会場、一瞬ざわつく。
そして。
拍手。
結愛、真っ赤。
優月、崩れ落ちて笑ってる。
唯ちゃんなんて涙出てる。
でも。
しゃもじを取ってくれたお父さんが笑って言った。
「強い魔法少女だね」
結愛、少し照れながら言う。
「……れんしゅうちゅうです」
会場ほっこり。
そして。
ついにショー開始。
ステージ。
ライト。
音楽。
本物の着ぐるみ魔法少女たち登場。
結愛、完全に釘付け。
悪役が現れる。
会場の子どもたちへ叫ぶ。
『みんな、応援してー!』
その瞬間。
結愛。
人生最大音量。
「がんばれぇぇぇぇ!!」
会場中に響く。
優月、吹き出す。
でも。
その全力さが、なんだかすごく結愛らしかった。
ショーのラスト。
魔法少女が言う。
『優しい気持ちが、一番強い魔法だよ!』
その言葉を。
結愛は、真剣な顔で聞いていた。
イベント終了後。
握手会。
結愛、ガチガチ。
順番が来る。
魔法少女がしゃがんで聞く。
「今日は来てくれてありがとう♪」
すると。
結愛は、少し震えながら言った。
「ゆあも……まほうしょうじょです」
優月、横で笑いこらえてる。
でも。
魔法少女のお姉さんは、ちゃんと頷いた。
「うん!すごく素敵な魔法少女だね!」
その瞬間。
結愛の顔が、ぱあっと輝いた。
帰り道。
結愛は、大事そうに握手した手を見ていた。
そして。
ぽつりと言う。
「ほんものだった……」
その声が、なんだか小さく感動していた。
優月は、そんな結愛を見ながら笑う。
「結愛も、本物だったよ」
結愛、びっくり。
「え?」
優月は言った。
「だって、ずっとみんな笑ってたもん」
その言葉に。
結愛は、少し照れながら笑った。
夜。
優月は、今日のイベントを絵に描いていた。
ライト。
魔法少女。
しゃもじ飛行事件。
そして。
キラキラ笑う結愛。
タイトルは――
『ゆあぴか、ほんものになる』
その絵は。
今までで一番、楽しそうだった。
その時。
結愛が、眠そうに言う。
「つぎは……そらとぶ……」
優月、即ツッコミ。
「だから危ないって!!」
家族全員、大爆笑。
山本家の夏は。
今日も、魔法みたいに賑やかだった。




