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ゆあぴかのまほう

数日後。


結愛の“魔法少女ブーム”は――


終わるどころか、進化していた。


朝。


リビング。


結愛、テーブルの上に紙を並べている。


真剣。


優月が覗き込む。


「なにしてるの?」


結愛は、顔を上げて言った。


「まほうしょうじょのなかま、ぼしゅう!」


ついに組織化。


しかも。


紙には、ぐにゃぐにゃ文字で書いてある。


『ゆあぴかちーむ』


横にはプリンの絵。


優月、大爆笑。


「プリン関係ある!?」


結愛、当然みたいに頷く。


「ひつよう」


何に。


そして。


勧誘開始。


まず。


唯ちゃん。


「ままは、“おはなまほう”!」


花属性。


似合う。


次。


僕。


「ぱぱは、“ごろごろまほう”!」


不名誉。


優月なんて笑いすぎて息できてない。


「ソファで寝るからでしょ!」


結愛、真顔。


「つよいまほう」


ダメ人間系能力だった。


そして最後。


優月。


結愛は、少し考えてから言った。


「ゆづきは、“すいーつまほう”!」


その瞬間。


優月が少し照れながら笑う。


「なんかかわいい」


結愛は、うんうん頷く。


「けーきでみんなにこにこにする!」


その言葉に。


僕と唯ちゃんは、少し顔を見合わせた。


結愛って。


ちゃんと見てるんだなって。


優月が、“好き”で頑張ってることを。


その日の午後。


結愛は、“チーム活動”を始めた。


内容。


庭の草むしり。


魔法少女とは。


でも。


結愛は本気。


「ざっそうまじょをたおす!!」


雑草が敵。


優月も付き合う。


「よし、スイーツ魔法いくよ」


唯ちゃんまで参加。


「お花パワー!」


僕も巻き込まれる。


「ごろごろ魔法!」


結愛、大笑い。


庭に、笑い声が広がる。


その時。


近所のおばあちゃんが通りかかった。


山本家を見て、びっくりしてる。


当然。


結愛、すぐ走っていく。


「こんにちは!!」


そして。


胸を張って言う。


「ゆあぴかです!」


おばあちゃん、数秒停止。


でも。


優しく笑った。


「かわいい魔法少女さんだねぇ」


結愛、超嬉しそう。


そのあと。


庭で採れたいちごを、おばあちゃんへ渡していた。


「げんきになるまほう!」


おばあちゃんは、何度もありがとうって笑っていた。


夕方。


家へ戻る。


優月が、ぽつりと言う。


「結愛って、“楽しい”を広げるの上手だよね」


僕は頷く。


たしかに。


結愛がいると。


普通の日が、少しだけ特別になる。


その時。


結愛が突然言う。


「ゆあぴか、まほうわかった!」


みんな振り向く。


結愛は、得意げ。


「やさしくすると、にこにこになる!」


数秒。


リビングが静かになる。


唯ちゃんが、小さく笑った。


「……それ、一番すごい魔法かもね」


優月も、静かに頷いていた。


夜。


優月は、スケッチブックへ今日の絵を描く。


雑草退治。


笑うおばあちゃん。


いちご。


しゃもじ。


そして。


真ん中で笑う結愛。


タイトルは――


『ゆあぴかのまほう』


その絵は。


今までで一番、明るい色だった。


その時。


結愛が、眠そうに言う。


「つぎは、そらとぶれんしゅうする」


優月、即ツッコミ。


「そこは危ない!!」


家族全員、大爆笑。


今日も山本家には。


小さくて優しい魔法が、いっぱい広がっていた。


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