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宇宙ケーキ

数日後。


山本家のリビング。


テーブルの上には――


大量のスケッチブック。


大量のケーキ本。


大量のメモ。


そして。


なぜか置かれているプリン三個。


結愛の仕業。


優月は、真剣な顔でノートを書いていた。


『次に作りたいケーキ』


そこには。


宇宙ケーキ。


星空ゼリーケーキ。


雲みたいなシフォンケーキ。


花畑タルト。


発想が、どんどん広がっている。


唯ちゃんが、少し驚いた顔で言う。


「優月、ほんとにケーキ好きになったね」


優月は、少し照れながら笑う。


「なんか、“作れる”って楽しい」


その言葉が、なんだか成長そのものだった。


その日。


ついに――


“宇宙ケーキ”挑戦。


結愛、大興奮。


「うちゅうぅぅ!!」


たぶん宇宙分かってない。


まずは。


青いゼリー作り。


紫。


青。


少し黒。


キラキラのアラザン。


優月は、色を混ぜながら真剣。


「夜空っぽくしたい」


その横で。


結愛。


アラザンを入れすぎる。


ドバァッ。


優月、固まる。


僕、吹き出す。


唯ちゃん、笑い崩れる。


結愛、真顔。


「ほしふやした」


宇宙、大爆発。


でも。


優月は怒らなかった。


少し笑って。


「じゃあ、“流れ星いっぱいの日”にしよっか」


その瞬間。


結愛、ぱあっと笑う。


「ながれぼし!!」


失敗を、“楽しい”へ変える。


それって、すごい力だなって思った。


冷やしている間。


みんなで宇宙の話になる。


結愛が聞く。


「うちゅうって、おわりあるの?」


難問。


僕が考えていると。


優月が、小さく言った。


「もしかしたら、“楽しいこと”みたいに終わらないのかも」


唯ちゃんが、少し驚いた顔をする。


僕も、静かに笑った。


優月って。


たまに、びっくりするくらい優しい言葉を言う。


そして。


完成。


宇宙ケーキ。


青いゼリー。


星みたいな飾り。


キラキラ。


まるで小さな銀河。


結愛、感動してる。


「きれぇぇ……」


食べるの忘れて見てる。


その時。


優月が、小さく言った。


「これ、“みんなで見た夜空”入ってる感じする」


思い出したのは。


ふたご座流星群の日。


みんなで空を見上げた夜。


寒かったけど。


笑ってた。


僕は、ケーキを見ながら思う。


優月のケーキって。


ただ甘いだけじゃない。


“思い出”まで入ってるんだなって。


一口食べる。


冷たくて、甘くて、少し爽やか。


結愛は、目を丸くする。


「うちゅうのあじ!」


どんな味。


でも。


みんな笑った。


そのあと。


結愛が、急にフォークを置いた。


「ゆづき」


優月が振り向く。


結愛は、ちょっと照れながら言った。


「ゆづき、けーきやさんなれるよ」


リビングが、少し静かになる。


優月は、びっくりした顔。


でも。


そのあと、小さく笑った。


「……なれたらいいな」


その声は、前より少し自信があった。


夢って。


最初は“好き”から始まって。


続けてるうちに、“なりたい”へ変わっていくのかもしれない。


その時。


結愛が元気よく言った。


「ゆあ、たべるてんちょう!」


優月、吹き出す。


「何するの!?」


結愛、ドヤ顔。


「おいしいです!っていう!」


重要だった。


家族全員、大爆笑。


窓の外では、六月の雨。


でも。


山本家の中には、小さな宇宙みたいな幸せが広がっていた。


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