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つきよのうさぎ  作者:
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19/302

それからの日々は、忙しかった。

それからの日々は、忙しかった。

唯ちゃんは大学と絵本制作。

僕は仕事をしながら、資格の勉強を始めた。

最初は全然うまくいかなかった。

参考書を開いても集中できない日もあるし、

仕事で疲れて、そのまま寝落ちしてしまう日もある。

そんな夜。

スマホに、唯ちゃんから写真が送られてくる。

“休憩中〜”

そこには、机に突っ伏している唯ちゃんと、描きかけのうさぎのイラスト。

その下に小さく、

“いっしょにがんばろ”

と書いてあった。

僕は思わず笑ってしまう。

そしてまた、参考書を開く。

不思議だった。

前なら、誰にも見られてない場所で頑張る意味なんて分からなかった。

でも今は違う。

唯ちゃんもどこかで頑張っている。

そう思うだけで、前を向けた。

ある雨の日。

唯ちゃんの部屋へ行くと、机の上に大量の絵本が積まれていた。

海外の絵本。

古い童話。

子ども向けなのに、大人でも泣いてしまうような物語。

唯ちゃんは真剣な顔でノートに何かを書いている。

「おじゃまします」

声をかけると、唯ちゃんは顔を上げた。

「あ、おかえり」

その“おかえり”が、自然すぎて胸が温かくなる。

僕は机の上を見る。

「すごい量だね」

「研究中なの」

「研究?」

唯ちゃんは頷く。

「“優しい言葉”って、簡単そうで難しいから」

そして一冊の絵本を開いて見せてくれる。

「ほら、難しい言葉使ってないのに、すごく心に残るでしょ?」

ページには、小さなクマが泣いている絵が描かれていた。

その下には短い文章。

“だいじょうぶ。なくひは、やさしい”

唯ちゃんはその言葉を見つめながら呟く。

「こういう言葉を書ける人になりたい」

僕は静かに言う。

「もう、なってると思うよ」

唯ちゃんは少し照れながら笑った。

「あなたって、本当に信じてくれるよね」

「だって唯ちゃん、自分で思ってるよりすごい人だから」

その瞬間。

唯ちゃんは少し黙ってから、ぽつりと言った。

「……昔はね」

「うん」

「誰かに信じてもらうの、怖かった」

雨音が静かに部屋を包む。

「期待されたら、いつか嫌われる気がしてたから」

僕はそっと唯ちゃんの隣に座る。

「今は?」

唯ちゃんは少し考えてから、小さく笑った。

「今は、信じてもらえると、ちゃんと嬉しい」

その笑顔は、柔らかかった。

傷が消えたわけじゃない。

でも唯ちゃんはもう、

その傷ごと、自分を愛そうとしていた。

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