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唯ちゃんが夢に向かっている走り始めてから

唯ちゃんが夢に向かって走り始めてから、

僕の中にも少しずつ変化が生まれていた。

前までの僕は、毎日をなんとなくやり過ごしていた。

仕事も、人生も、

「こんなものか」って諦めながら生きていた。

でも唯ちゃんは違った。

怖くても前へ進いて、

傷ついても、人を好きでいることをやめなかった。

そんな唯ちゃんを見ているうちに、思うようになった。

――僕も変わりたい。

ある夜。

大学帰りの唯ちゃんと、川沿いを歩いていた。

春の風が気持ちよくて、桜の花びらが静かに流れていく。

唯ちゃんは楽しそうに、コンテストの次の作品の話をしていた。

「今度はね、迷子のうさぎの話描きたいの」

「またうさぎなんだ」

「うさぎ好きだもん」

笑う唯ちゃんを見ながら、僕はふと口を開いた。

「俺さ」

「ん?」

「もっと頑張ろうと思う」

唯ちゃんが不思議そうにこちらを見る。

「急にどうしたの?」

「唯ちゃん見てたら、自分も成長したくなった」

その言葉に、唯ちゃんは少し驚いた顔をした。

僕は続ける。

「前まで、自分のこと諦めてたんだと思う」

川の水音が静かに響く。

「でも唯ちゃんが、“変わろうとしてる人”って、こんなに綺麗なんだって教えてくれたから」

唯ちゃんは立ち止まった。

風で髪が揺れる。

「……そんなふうに思ってたの?」

「うん」

「私、かっこ悪いとこいっぱい見せてるのに」

僕は笑う。

「そこが好きなんだよ」

唯ちゃんは少し照れながら、視線を逸らした。

「ずるいなぁ……」

僕は空を見上げながら言う。

「資格とか、勉強とか、ちゃんとやってみようかなって思ってる」

「いいじゃん!」

唯ちゃんの声が明るくなる。

「絶対いいと思う!」

「でも、続くかな」

すると唯ちゃんは、少し真面目な顔になった。

「続くかどうかじゃないよ」

「え?」

「“やってみたい”って思えたことが、もうすごいんだよ」

その言葉は、唯ちゃん自身にも向けているみたいだった。

昔、“どうせ無理”って思っていた唯ちゃん。

そんな彼女だからこそ、言える言葉だった。

唯ちゃんは僕の前に立って、にこっと笑う。

「じゃあ約束しよ」

「約束?」

「お互い、ちゃんと自分の人生頑張るの」

そして小指を差し出す。

あの日、カラオケの帰りにした約束みたいに。

僕はその指に、自分の指を絡めた。

唯ちゃんは嬉しそうに笑う。

「なんかさ」

「うん?」

「好きな人が頑張ってると、自分も頑張ろうって思えるね」

夜風の中。

僕たちは並んで歩き出す。

もう、どちらかが救うだけじゃなかった。

支え合いながら、

少しずつ未来へ向かって歩いていた。

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