いちご村
五月の終わり。
山本家の庭では――
いちご村が繁栄していた。
赤い実が増えている。
結愛、毎朝テンションMAX。
「ふえてるぅぅ!!」
しかも。
最近は、優月より早起き。
成長してるのか、いちご効果なのか分からない。
その日。
唯ちゃんが言った。
「今日は“いちご収穫祭”しようか」
結愛、固まる。
数秒後。
「まつりぃぃぃ!!」
急に踊り始める。
優月、大爆笑。
午後。
みんなで庭へ。
小さなカゴ。
ハサミ。
帽子。
完全に農家スタイル。
結愛は、真剣な顔でいちごを見ていた。
「これは……あかい」
当たり前。
でも。
本人はプロっぽい。
優月は、横で笑いながら収穫。
「結愛、それまだちょっと白いよ」
すると。
結愛、じっと見る。
「……みならいだった」
見習いだったらしい。
その時。
事件発生。
結愛、足を滑らせる。
「あぁっ!!」
僕たち、慌てる。
でも。
転ぶ寸前。
優月が、とっさに手を掴んだ。
ギリギリセーフ。
結愛、ぽかん。
優月も少しびっくりしてる。
数秒後。
結愛、ぎゅっと優月に抱きついた。
「ありがとう……」
優月は、ちょっと照れながら笑う。
「いちご守ったね」
結愛、真顔。
「いちごも、ゆあも、たすかった」
家族全員、吹き出す。
夕方。
収穫したいちごを、みんなで洗う。
小さいけど、真っ赤。
唯ちゃんが言う。
「これで何作る?」
すると。
結愛、元気よく手を挙げる。
「いちごぱふぇ!!」
絶対言うと思った。
ということで。
山本家・手作りいちごパフェ大会開催。
アイス。
生クリーム。
コーンフレーク。
そして、自家製いちご。
優月は、丁寧に盛り付け。
唯ちゃんは、おしゃれ担当。
僕は、生クリーム係。
そして。
結愛。
……全部盛る係。
結果。
山みたいになる。
優月、大笑い。
「高すぎるって!」
結愛、自慢げ。
「いちごたわー!」
その瞬間。
グラッ。
パフェ、倒れる。
しかも。
僕のズボン直撃。
数秒静止。
そして――
結愛、青ざめる。
「……ぱぱ、ごめん」
リビングが静かになる。
でも。
僕は、ズボンについた生クリームを見て言った。
「……おしゃれになった?」
優月、吹き出す。
唯ちゃん、大爆笑。
結愛も、だんだん笑い始める。
そのあと。
みんなで一緒に片付けた。
優月は、結愛にそっと言う。
「失敗しても、一緒に片付ければ大丈夫だよ」
結愛、小さく頷く。
「うん……」
その顔が、少しお姉さんっぽかった。
夜。
完成したパフェを食べる。
甘い。
ちょっと不格好。
でも。
すごく美味しかった。
結愛は、アイスを食べながら言う。
「これ、せかいいちおいしい」
優月が笑う。
「なんで?」
すると。
結愛は、当たり前みたいに言った。
「みんなでつくったから」
その瞬間。
僕も唯ちゃんも、少し黙った。
たぶん。
本当にそうなんだと思う。
美味しい理由って。
味だけじゃない。
一緒に笑ったこととか。
失敗したこととか。
全部入ってる。
窓の外では、五月の夜風。
庭のいちごが、静かに揺れていた。
そして。
結愛は、最後の一口を食べながら言った。
「つぎは、すいかむらつくる」
優月、即ツッコミ。
「規模でかくなってる!」
家族全員、大爆笑。
山本家の“村づくり”は、まだまだ続きそうだった。




