僕の誕生日
四月の終わり。
その日は――
僕の誕生日だった。
朝。
目を覚ますと、なんだか家の中が静か。
……妙に静か。
嫌な予感。
リビングへ行こうとすると。
突然。
バタバタバタッ!!
何か倒れる音。
小さい悲鳴。
そして。
「まだぁぁ!!」
結愛の声。
完全にバレてる。
僕は、思わず笑ってしまった。
しばらくして。
「……いいよ!」
許可が出た。
リビングの扉を開ける。
すると――
「おたんじょうび、おめでとぉぉ!!」
クラッカー。
折り紙。
手作り飾り。
そして。
ちょっと曲がった“おめでとう”の文字。
結愛、満面の笑み。
優月は、少し照れながら立っていた。
唯ちゃんも笑ってる。
その瞬間。
胸が、じわっと温かくなる。
テーブルには。
みんなで作った料理。
ハンバーグ。
唐揚げ。
ポテト。
僕の好きなものばかり。
結愛は、超誇らしそう。
「ゆあ、ぽてとならべた!」
重要任務。
優月は、小さな箱を持ってきた。
「はい」
開ける。
中には――
一冊の小さな手作り絵本。
表紙には。
『ぱぱのすきなもの』
僕は、少し驚く。
ページを開く。
そこには。
家族の絵。
焼肉。
山登り。
沖縄。
ゴロゴロする日。
全部、今までの思い出だった。
優月の優しい絵。
その横に、結愛の自由な落書き。
プリン率高い。
最後のページ。
みんなで笑ってる絵。
その下に、小さく書いてあった。
『いつもありがとう』
僕は、しばらく言葉が出なかった。
唯ちゃんが、少し笑いながら言う。
「優月、毎日ちょっとずつ描いてたんだよ」
見ると。
優月は、少し恥ずかしそう。
「……びっくりさせたかったから」
その顔を見た瞬間。
なんだか泣きそうになる。
たぶん。
“祝ってもらう”って。
プレゼントだけじゃない。
“覚えてくれてる”ことが嬉しいんだと思う。
昼。
みんなでケーキ。
もちろん結愛は、ロウソクを吹きたがる。
「ゆあも!!」
結局、一緒に吹く。
完全に共同作業。
夜。
お風呂のあと。
ソファで、もらった絵本をもう一度開く。
ページをめくるたび。
笑い声が聞こえてきそうだった。
僕は思う。
昔は。
誕生日って、“歳をとる日”だった。
でも今は違う。
“今ある幸せを確認する日”みたいになっている。
その時。
眠そうな結愛が、僕の横へ来て言った。
「ぱぱ、またおたんじょうびしてね」
優月、吹き出す。
「毎年来るから」
結愛、安心した顔。
「よかった……」
家族全員、大笑い。
春の終わり。
山本家のリビングには、今日も優しい笑い声が広がっていた。




