沖縄 最終日
沖縄四日目。
旅行、最終日。
朝。
ホテルの部屋は、少しだけ静かだった。
たぶんみんな、“帰る日”って分かっていた。
結愛ですら、今日は少し落ち着いている。
ベランダへ出ると。
朝の海が広がっていた。
青。
風。
波の音。
優月は、手すりにもたれながら海を見ていた。
「帰りたくないなぁ」
小さな声。
唯ちゃんが笑う。
「わかる」
僕も頷く。
沖縄の時間って、不思議だった。
ゆっくりで。
柔らかくて。
気づくと、心までのんびりしてる。
朝ごはんのあと。
飛行機の時間まで、最後に海を散歩することになった。
砂浜を歩く。
結愛は、今日も貝殻探し。
でも。
途中で急に立ち止まる。
「うみさん、ばいばいしないと」
そう言って。
海に向かって、小さく手を振った。
優月が、その姿を静かに見ていた。
そして。
スケッチブックを開く。
最後の沖縄の絵。
海に手を振る結愛。
朝の光。
白い波。
その絵は、今までで一番優しい色だった。
空港へ向かう車の中。
みんな少し眠そう。
でも。
結愛だけは、最後まで窓を見ていた。
「やしのき……」
「うみ……」
名残惜しそう。
空港へ着くと。
お土産選び大会が始まる。
結愛、シーサー欲しがる。
しかも。
顔がちょっと変なやつ。
優月、大爆笑。
唯ちゃんは、紅芋タルトを選んでいた。
僕は、みんなの様子を見ながら思う。
旅行って。
帰る時が、一番“楽しかった”って分かるのかもしれない。
飛行機。
窓の外。
少しずつ小さくなる沖縄の海。
優月は、それを静かに見ていた。
そして、小さく呟く。
「また来たいな」
僕は笑う。
「また来よう」
その言葉に。
優月は嬉しそうに頷いた。
結愛は、途中で爆睡。
腕には、買ったシーサーを抱えてる。
絶対離さない気。
数時間後。
地元へ到着。
空気が少し冷たい。
「さむっ」
沖縄との差がすごい。
家へ帰ると。
なんだか少しホッとする。
結愛は、ソファへ倒れ込む。
「おうちだぁ……」
旅行は楽しい。
でも。
帰る場所があるから、もっと楽しいのかもしれない。
夜。
優月は、自分の部屋でスケッチブックを広げていた。
沖縄で描いた絵。
海。
ジンベエザメ。
虹。
夕日。
家族。
そして。
最後のページに、小さく書いた。
『また、みんなで来ようね』
僕は、その文字を見て少し胸が温かくなる。
きっと。
何年後かに、この絵を見返した時。
沖縄の匂いとか。
風とか。
笑い声まで思い出せるんだろうなって。
その時。
リビングから結愛の声。
「つぎ、ほっかいどういく!」
優月、即ツッコミ。
「移動距離すごい」
家族全員、大爆笑。
山本家の旅は。
まだまだ続きそうだった。




