沖縄
春休み最後の大イベント。
それは――
沖縄旅行。
出発の数日前から。
結愛のテンションがおかしかった。
「うみ!?」
「おさかな!?」
「ぱいなっぷる!?」
全部楽しみらしい。
優月は、旅行雑誌を見ながら静かにワクワクしていた。
「沖縄の海、描いてみたいな」
唯ちゃんは、荷物を準備しながら笑う。
「絶対きれいだよ」
そして当日。
空港。
大きなスーツケース。
朝のざわざわした空気。
結愛、飛行機を見るたび大騒ぎ。
「でかぁぁ!!」
優月まで少し興奮してる。
飛行機へ乗ると。
結愛は窓にぺったり。
離陸の瞬間――
「うぉぉぉ!!」
ジェットコースターみたいな反応。
僕たち、大笑い。
数時間後。
沖縄到着。
飛行機を降りた瞬間。
「あったかい!」
春なのに、空気が全然違う。
青い空。
ヤシの木。
海の匂い。
優月は、しばらく空を見上げていた。
「色が違う……」
たしかに。
空も海も、“沖縄の青”だった。
ホテルへ向かう途中。
結愛は、ずっと窓の外を見ている。
「うみぃぃ!!」
海を見るたび叫ぶ。
忙しい。
ホテルへ着くと。
オーシャンビュー。
窓の向こう、一面の海。
結愛、ダッシュ。
「すごぉぉぉ!!」
優月も、静かに感動していた。
その日の午後。
みんなで海へ。
白い砂浜。
透明な海。
波の音。
結愛は、靴を脱いだ瞬間、海へ突撃。
「つめたぁぁい!!」
でも楽しそう。
優月は、波打ち際に座って貝殻を拾っていた。
唯ちゃんは、風を受けながら笑ってる。
僕は、その景色を見て思う。
“旅行”って。
景色を見るだけじゃなくて。
家族の表情を見る時間なんだなって。
夕方。
海に沈む夕日。
オレンジ色の空。
結愛が、小さく呟く。
「うみ、ぴかぴか……」
優月は、その景色をスケッチブックへ描き始めた。
沖縄の海。
夕日。
並んで座る家族。
風。
静かな時間。
その絵は、いつもより少し大人っぽかった。
夜。
沖縄料理のお店へ。
ソーキそば。
ゴーヤーチャンプルー。
ラフテー。
結愛は、ゴーヤを一口食べて――
「にがぁぁ!!」
優月、大爆笑。
唯ちゃんなんて笑いすぎて涙出てる。
でも。
ソーキそばは気に入ったらしい。
「おいしい!」
そのあと。
デザートのブルーシールアイス。
結愛、完全復活。
「さいこう……」
ホテルへ戻る頃には。
みんな少し日焼けしていた。
部屋のベランダへ出る。
夜の海。
波の音。
優月が、ぽつりと言う。
「なんか、夢みたい」
僕は頷く。
「うん」
その時。
結愛が、眠そうに聞く。
「ここにすむ?」
優月、吹き出す。
唯ちゃんも笑う。
でも。
そのくらい、沖縄は心地よかった。
南の島の夜。
山本家の笑い声は、波の音に混ざってゆっくり流れていった。




