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焼肉を食べに行く

春休みのある日。


夕方。


リビングでゴロゴロしていた結愛が、突然言った。


「おにくたべたい」


急。


優月が笑う。


「どんな?」


結愛、目を輝かせる。


「じゅーってするやつ!」


つまり――


焼肉。


その瞬間。


なぜか全員、焼肉の口になる。


恐ろしい言葉。


唯ちゃんなんて、すでに「カルビかなぁ」とか言い始めてる。


ということで。


山本家、焼肉屋さんへ出発。


夜の焼肉屋。


店に入った瞬間。


ジュウゥゥ……という音。


いい匂い。


煙。


結愛、完全停止。


「……てんごく」


最近よく天国行く。


席へ座ると。


結愛は、メニューを真剣に見ていた。


でも。


文字より写真。


「これ!」


指差した先――


超巨大パフェ。


焼肉関係ない。


優月、大爆笑。


僕まで吹き出した。


注文したお肉が届く。


カルビ。


タン。


ハラミ。


野菜。


そして。


網の上へ。


ジュゥゥゥゥ……


その音だけで幸せ。


結愛、拍手。


「やけてるぅぅ!!」


優月は、トングで真剣に焼いていた。


ちょっと職人っぽい。


唯ちゃんが笑う。


「優月、焼肉奉行だ」


優月、ちょっと得意げ。


「焼きすぎないの大事だから」


その横で。


結愛は、待ちきれない。


「まだ!?」


せっかち。


やっと焼ける。


ふーふーして、一口。


すると――


「おいしぃぃぃ!!」


店中に響きそうな声。


僕たち、大笑い。


でも。


本当に美味しかった。


焼肉って、“食べるイベント”って感じがする。


みんなで焼いて。


「それ私の!」


とか言って。


笑いながら食べる。


その時間ごと楽しい。


途中。


優月が、ちょっと大人っぽくタンを食べていた。


唯ちゃんが笑う。


「なんか通っぽい」


優月、照れる。


その時。


結愛が、お肉をじーっと見ながら聞く。


「これ、うしさん?」


僕は頷く。


結愛は、小さく「そっかぁ」と言った。


それから。


「ありがとうしてたべる」


ちゃんと手を合わせた。


僕は、その姿を見て少し胸が温かくなる。


食べるって。


“命をもらう”ことなんだって。


子どもなりに、ちゃんと感じてるんだなと思った。


そして。


事件発生。


結愛、ご飯にタレをかけすぎる。


茶色。


優月、笑い崩れる。


唯ちゃんまで涙出てる。


でも。


結愛は真剣。


「ごうか!」


たしかに豪華。


最後。


デザート。


結愛は、念願のプリン。


超幸せそう。


「やきにくのあと、ぷりんってさいこう……」


それを聞いて。


優月が笑いながら言う。


「結愛って、人生楽しそうだよね」


僕も頷く。


たしかに。


美味しいだけで全力で幸せになれるのって、すごい才能かもしれない。


帰り道。


みんな、お腹いっぱい。


結愛は、車の中で半分寝ながら呟いた。


「つぎは……おすしたべたい……」


優月、即ツッコミ。


「もう次考えてる」


家族全員、大爆笑。


春の夜。


山本家のお腹も心も、ぽかぽかだった。


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