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プリンの山

山登りの次の日。


山本家は、全員ちょっと筋肉痛だった。


朝。


僕が階段を降りながら「いたた……」と言うと。


唯ちゃんも苦笑い。


「脚きてるねぇ」


優月は、歩き方が少し変。


でも。


なぜか嬉しそう。


「なんか、“冒険した感”ある」


その横で。


結愛は――


元気。


「へいき!」


子ども、強すぎる。


朝ごはんを食べながら。


優月は、昨日のスケッチを広げていた。


山の頂上。


春の風景。


おにぎりを食べる結愛。


笑ってる唯ちゃん。


それを見て、結愛が嬉しそうに言う。


「ゆあいる!」


最近、絵本や絵に自分が出てくるのが大好きらしい。


その時。


優月が、小さく呟いた。


「山の絵、ちゃんと描きたいな」


僕は笑う。


「昨日の思い出?」


優月は頷いた。


「空気が気持ちよかったから」


午後。


優月は、部屋で大きな画用紙を広げ始めた。


今回は、いつものスケッチより大きい。


絵画教室でもらった新しい絵の具セット。


静かな顔で、色を混ぜている。


結愛も隣に座る。


「ゆあもする!」


数秒後。


手に絵の具ついてる。


早い。


優月は、山の空を描いていた。


春っぽい青。


少し白い雲。


遠くの町。


木々の緑。


そして。


頂上で並んで座る家族。


僕は、後ろからそっと見ていた。


優月の絵は、前より“広く”なっていた。


景色だけじゃなく。


風とか。


光とか。


その時の気持ちまで描こうとしてる感じがする。


その時。


結愛が、こっそり端っこに何か描き足す。


優月、気づく。


「なに描いたの?」


結愛、得意げ。


「ぷりん!」


山の上に巨大プリン出現。


優月、爆笑。


唯ちゃんまで笑ってる。


僕も吹き出した。


でも。


優月は、そのプリンを消さなかった。


むしろ。


少しだけ周りに花まで描き足した。


「プリン山……」


結愛、大喜び。


夕方。


絵が完成する。


そこには、“山本家の春”が描かれていた。


広い空。


春の山。


笑ってる家族。


そして、謎のプリン山。


でも。


なんだかすごく山本家らしい。


優月は、少し離れて絵を見る。


それから、小さく笑った。


「なんか、昨日の匂い思い出す」


僕は、その言葉に少し驚いた。


絵って、景色だけじゃなく。


匂いとか。


空気とか。


思い出まで戻してくれるんだなって。


夜。


その絵をリビングへ飾った。


結愛は、何回も見上げてる。


「これすき!」


唯ちゃんも優しく笑った。


「宝物増えたね」


僕は頷く。


たぶん。


絵だけじゃない。


こういう毎日そのものが、少しずつ宝物になっていくんだと思う。


その時。


結愛が真顔で言った。


「つぎは、ぷりんやまのぼる」


優月、即ツッコミ。


「ないから」


家族全員、大爆笑。


春の夜。


山本家の笑い声は、今日も温かかった。


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