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絵画教室4

二月。


雪がちらつく土曜日。


優月は、マフラーを巻きながら嬉しそうに玄関へ向かっていた。


「今日は自由に描ける日なんだって」


絵画教室にも、少しずつ慣れてきた。


先生とも話せるようになったし。


他の子とも、少しずつ笑い合えるようになってきた。


その姿を見ていると。


僕まで嬉しくなる。


アトリエへ着くと。


今日は、机の上にテーマカードが置いてあった。


『想像の世界を描こう』


結愛、即反応。


「ぷりんのせかい!!」


先生、大笑い。


でも。


優月は少し考え込んでいた。


鉛筆を持ったまま、じっと白い紙を見る。


何を描こうか迷っている。


その時。


先生が優しく言った。


「“あったらいいな”って思う景色でもいいよ」


優月は、その言葉を聞いて少しだけ目を輝かせた。


それから。


静かに描き始める。


最初は、大きな木。


その周りに、光みたいな花。


空には、流れ星。


地面には、小さな川。


そして。


川辺で笑っている、小さな女の子。


結愛っぽかった。


さらに。


その横でスケッチブックを持っている女の子。


たぶん、自分。


僕は、その絵を見ながら思う。


優月は、“楽しかった気持ち”を絵にしてるんだなって。


途中。


隣の席の子が話しかけてきた。


「その星きれい」


優月は、少し照れながら答える。


「流れ星なの」


「ほんとに見たの?」


「うん。家族で見に行った」


その会話が、なんだか自然だった。


前なら。


優月は、もっと静かにしていた気がする。


でも今は。


“好きなこと”を通して、ちゃんと自分から話してる。


その変化が、僕は嬉しかった。


数時間後。


絵が完成する。


そこには、“優月の好き”がいっぱい詰まっていた。


夜空。


家族。


花。


静かな光。


先生は、しばらく絵を見てから言った。


「優月ちゃんの絵って、“やさしい音”がするね」


優月、きょとん。


「音?」


「うん。大きな声じゃなくて、静かに心に入ってくる感じ」


優月は、少し不思議そうに笑った。


でも。


すごく嬉しそうだった。


帰り道。


雪が少し積もっていた。


結愛は、歩きながら雪を踏む。


「ぎゅっぎゅってする!」


優月は、今日描いた絵を見ながらぽつりと言う。


「もっと色んな絵描きたいな」


僕は笑う。


「いいね」


すると。


優月は少し考えてから言った。


「いつか、“山本家の一年”とか描いてみたい」


春のひまわり。


夏祭り。


流星群。


鍋。


ラーメン。


笑ってる結愛。


その言葉を聞いて。


僕は、なんだか胸が温かくなった。


その時。


結愛が突然。


「ゆあ、まんなかでおおきくかいてね!」


優月、大爆笑。


「はいはい」


雪の帰り道。


二人の笑い声が、白い空へふわっと広がっていった。


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