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絵画教室2

次の土曜日。


優月、朝からソワソワしていた。


理由はもちろん――


絵画教室。


朝ごはんを食べながらも、スケッチブックを開いている。


結愛は、その横でじーっと見ていた。


「ゆづき、たのしそう」


優月は、少し笑う。


「うん。今日は何描こうかなって考えてる」


すると。


結愛、即答。


「ぷりん!」


ブレない。


絵画教室へ着くと。


アトリエには、冬の日差しが入っていた。


絵の具の匂い。


静かな音楽。


前回より、優月は少しだけ緊張していない。


先生が笑顔で迎える。


「こんにちは、優月ちゃん」


「こんにちは!」


ちゃんと大きな声。


えらい。


今日のテーマは、“思い出の景色”。


先生が言う。


「好きな景色を描いてみよう」


優月は、少し考え込む。


窓の外を見る。


それから。


静かに鉛筆を動かし始めた。


最初に描いたのは、大きな丸。


月だった。


その周りに、たくさんの小さな星。


そして。


並んで座る家族の後ろ姿。


僕は、すぐ分かった。


流星群を見に行った日の景色。


優月は、夢中だった。


色を重ねる。


指で少しぼかす。


夜空が、どんどん深くなっていく。


その時。


隣の席の男の子が、優月の絵を見て言った。


「きれい」


優月、びっくり。


少し照れながら、「ありがとう」と笑った。


その笑顔を見て。


僕は、なんだか安心した。


好きなものを通して、少しずつ世界が広がってる気がしたから。


途中。


先生が優月の横へ来る。


しばらく絵を見て。


それから優しく言った。


「優月ちゃんって、“空気”描くの上手だね」


優月、きょとん。


「空気?」


「うん。寒さとか、静かさとか、“その時の感じ”が伝わる」


優月は、自分の絵をじっと見た。


たぶん。


初めて言われた言葉だった。


でも。


少し嬉しそうだった。


教室が終わる頃には。


夜空の絵が完成していた。


深い青。


流れる星。


寄り添う家族。


そこには、ちゃんと“あの日の時間”があった。


帰り道。


優月は、スケッチブックを見ながらぽつりと言う。


「絵って、不思議だね」


「ん?」


「忘れそうなこと、残せる」


僕は、その言葉に静かに頷いた。


たしかに。


写真とは少し違う。


絵には、“描いた人の気持ち”まで残る気がする。


家へ帰ると。


結愛、いつものようにダッシュ。


「みせてぇぇ!!」


優月が絵を広げる。


結愛、数秒見つめて――


「きれぇ……」


珍しく静かだった。


でも。


次の瞬間。


「あ!ゆあいる!」


自分を発見。


大喜び。


唯ちゃんも、優しく笑った。


「ほんと素敵」


優月は、少し照れながらも嬉しそうだった。


その夜。


優月は、自分の部屋でも絵を描いていた。


前より、迷わず線を引いている。


僕は思う。


“好き”って。


続けてるうちに、“自信”になっていくのかもしれない。


その時。


リビングから結愛の声。


「ゆづきー!つぎ、ぷりんのうちゅうかいてー!」


優月、大爆笑。


静かな夜に。


また山本家の笑い声が広がっていった。


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