絵画教室
冬休みが終わる少し前。
夕方。
優月は、リビングで静かに絵を描いていた。
窓の外の空。
こたつで寝てる結愛。
笑ってる唯ちゃん。
最近の優月は、本当にたくさん描く。
その時。
唯ちゃんが、優月のスケッチブックを見ながら言った。
「優月、ほんと絵好きだねぇ」
優月は、少し照れながら笑う。
「うん」
それから、少しだけ迷うように言った。
「もっと上手くなりたいな」
その言葉に。
僕と唯ちゃんは顔を見合わせた。
数日後。
僕たちは、近くの絵画教室を見学しに行くことになった。
小さなアトリエ。
絵の具の匂い。
壁いっぱいの絵。
優月は、入った瞬間から少し緊張していた。
でも。
目はキラキラしてる。
先生は、優しそうな女性だった。
「好きなもの描いていいよ」
その言葉に。
優月は、少し安心した顔をする。
体験教室スタート。
他の子たちも、自由に描いている。
花。
動物。
空。
静かな時間。
カリカリと鉛筆の音だけが聞こえる。
優月は、しばらく真剣に白い紙を見ていた。
それから。
ゆっくり描き始める。
線が増えていく。
色が乗る。
気づけば。
そこには、冬の夜空が描かれていた。
流れ星。
並んで空を見る家族。
ふたご座流星群の日の絵だった。
僕は、少し胸が熱くなる。
先生も、優月の絵を見て優しく笑った。
「優月ちゃん、“好き”がちゃんと入ってるね」
優月は、少し驚いた顔をする。
「好き?」
「うん。上手いだけじゃなくて、“描きたい気持ち”が見える」
その言葉に。
優月は、静かに絵を見つめていた。
帰り道。
空は夕焼け。
優月は、スケッチブックを大事そうに抱えて歩いている。
僕が聞く。
「どうだった?」
優月は、少し考えて――
「楽しかった」
その顔は、本当に嬉しそうだった。
家へ帰ると。
結愛が全力で走ってくる。
「どうだった!?」
優月は、描いた絵を見せる。
結愛、目をまんまるにする。
「すごぉぉ……」
それから。
真剣な顔で聞く。
「ぷりんかける?」
優月、吹き出す。
「描けるよ」
すると。
結愛、大喜び。
「じゃあ、ぷりんのせかい!」
どんな世界。
その夜。
優月は、机で新しいスケッチブックを開いていた。
前より少しだけ、自信がある顔。
僕は、その姿を見ながら思う。
“好き”って。
きっとすごい力だ。
誰かに言われたからじゃなく。
自分からやりたいって思えるもの。
それは、人をちゃんと前へ進ませる。
その時。
優月が、小さく呟いた。
「もっといっぱい描きたいな」
僕は笑った。
「描けばいいよ。いっぱい」
すると。
優月は、嬉しそうに笑った。
その笑顔は。
なんだか、少し未来へ向いている気がした。




