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二人でデート

十二月のある土曜日。


朝。


珍しく、唯ちゃんが少しソワソワしていた。


理由は――


「今日、二人で出かけない?」


デートのお誘いだった。


僕は少し驚く。


「え、二人で?」


すると。


後ろから優月がニヤニヤ。


「たまには行ってきなよ」


結愛まで、なぜか腕組み。


「でーと!」


完全にバレてる。


実は。


今日は、優月と結愛を僕の両親が見てくれる日だった。


つまり。


久しぶりの、“夫婦だけの日”。


昼前。


僕たちは、少しだけ照れながら家を出た。


なんだろう。


付き合いたてみたいに変に緊張する。


駅前のカフェへ入る。


静かな音楽。


温かいコーヒー。


唯ちゃんは、ふわっと笑った。


「なんか不思議だね」


「うん」


子どもたちがいないだけで、時間の流れが少し違う。


ゆっくり話せる。


途中で「こぼした!」もない。


「トイレ!」もない。


それがちょっと新鮮だった。


唯ちゃんが、コーヒーを持ちながら聞く。


「最近どう?」


僕は笑う。


「ざっくりだなぁ」


でも。


その質問が、なんだか嬉しかった。


父親とか。


母親とか。


毎日の役割じゃなくて。


ちゃんと“僕”として話してくれてる感じがした。


そのあと。


二人で街を歩く。


クリスマス前の商店街。


イルミネーション。


流れる音楽。


唯ちゃんは、雑貨屋さんで立ち止まる。


小さな花柄のマグカップを見つめていた。


「かわいい……」


僕は、その顔を見るのが好きだった。


優しいものを見つけた時の顔。


昔から変わらない。


夕方。


少し早めの夜ご飯。


二人でパスタを食べながら、昔話になった。


「最初のデート覚えてる?」


唯ちゃんが聞く。


僕は少し考える。


「あ、映画行ったやつ?」


「そうそう」


でも。


そのあと、僕が道に迷った。


唯ちゃん、大爆笑。


「二時間くらい歩いたよね」


「ごめんって」


でも。


笑いながら話してると。


あの頃の空気が、少し戻ってくる気がした。


結婚して。


家族が増えて。


毎日が忙しくなって。


“夫婦”って、“お父さんとお母さん”になっていく。


でも。


こういう時間があると。


ちゃんと、“二人だった頃”も残ってるんだなって思えた。


帰り道。


夜空には、冬の星。


冷たい空気。


唯ちゃんが、ふと僕の隣で笑った。


「なんか、元気出た」


僕は頷く。


「僕も」


家に着くと。


玄関が開く前から、声が聞こえる。


「おかえりぃぃ!!」


結愛。


勢いがすごい。


優月までニヤニヤしてる。


「デートどうだった?」


僕と唯ちゃん、ちょっと固まる。


そして。


結愛が真顔で聞いた。


「ぷりんたべた?」


家族全員、大爆笑。


結局。


最後はいつも通りだった。


でも。


その“いつも通り”が、なんだかすごく幸せだった。


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