唯の仕事
ある日の夜。
夕飯を食べながら。
優月が、ふと唯ちゃんに聞いた。
「ねえ、ままって仕事で何してるの?」
結愛も反応。
「してるの!?」
失礼。
唯ちゃん、思わず吹き出す。
「してるよ〜」
実は。
唯ちゃんは、デザイン関係の仕事をしていた。
家で仕事をする日も多い。
だから結愛の中では、“いつも家にいる人”だったらしい。
優月は興味津々。
「どんなお仕事?」
唯ちゃんは少し考える。
「えーっとね、“見やすくしたり、かわいくしたりする仕事”かな」
結愛、きょとん。
たぶん分かってない。
僕は笑いながら補足する。
「ポスターとか、チラシとか、いろんなデザイン作ってるんだよ」
すると。
結愛、目を輝かせる。
「まま、まほうつかい!?」
なんか近い気もする。
その週末。
優月が、「仕事してるとこ見たい」と言い出した。
ということで。
唯ちゃんの“お仕事見学会”開催。
リビングの机。
ノートパソコン。
色見本。
スケッチ。
唯ちゃんは、真剣な顔で画面を見ていた。
普段のふわっとした雰囲気と少し違う。
優月は、静かに見ている。
「なんか、かっこいい……」
唯ちゃん、少し照れる。
その時。
結愛がパソコンを覗き込む。
「なにこれ!」
画面には、イベント用のデザイン案。
色んな色。
文字。
イラスト。
唯ちゃんは、優しく説明する。
「見た人が、“楽しそう!”って思うように作ってるの」
優月は、その言葉に少し驚いた顔をした。
「そんなこと考えて作ってるんだ」
唯ちゃんは笑った。
「うん。“誰かの気持ち”考える仕事だから」
その言葉を聞いて。
僕は、なんだか唯ちゃんらしいなって思った。
優しい色を選ぶところも。
細かいところに気づくところも。
全部、仕事に出てる。
その時。
結愛が突然、紙にぐるぐる描き始める。
「ゆあもする!」
数分後。
完成。
……謎の丸。
しかも。
真ん中にプリン。
優月、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
結愛、超得意げ。
「デザイン!」
その夜。
子どもたちが寝たあと。
僕は、仕事をしている唯ちゃんを少し離れて見ていた。
画面の光。
真剣な横顔。
静かなキーボードの音。
普段は“ママ”の顔ばかり見てるけど。
こういう時間の唯ちゃんは、また違って見える。
僕がぽつりと言う。
「仕事してる時、かっこいいね」
唯ちゃん、びっくりした顔。
それから、少し照れながら笑った。
「なに急に」
でも。
嬉しそうだった。
その時。
寝室から、結愛の寝言。
「……ぷりん……」
僕たち、吹き出す。
どんな時でも。
山本家は、山本家だった。




