表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
156/302

成績表

十二月の終わり。


冬休み直前。


夕方。


優月が、ランドセル……ではなく、学校バッグを少し静かに置いた。


いつもより、おとなしい。


僕は気づく。


「どうした?」


優月、少しだけ視線をそらす。


「……今日、成績表だった」


ああ。


その瞬間。


ソファでみかん食べてた結愛が反応。


「せいせきひょう!?」


たぶん意味は分かってない。


唯ちゃんが、優しく笑う。


「見せてくれる?」


優月は、小さく頷いて成績表を差し出した。


僕と唯ちゃん、並んで見る。


字も丁寧。


先生からのコメントもたくさん書いてある。


『周りをよく見て行動できます』

『絵や表現が豊かです』


僕は、自然と笑っていた。


「優月らしいね」


優月は、少し緊張した顔。


「……でも、算数ちょっと下がった」


たしかに。


少しだけ。


でも。


唯ちゃんは、優しく言った。


「苦手をちゃんと頑張ってたの、先生も書いてくれてるよ」


優月は、静かに成績表を見る。


僕は言う。


「結果だけじゃなくて、“頑張った”って大事だと思う」


すると。


優月が少し安心したみたいに笑った。


「……うん」


その時。


結愛が突然、自分のカバンをごそごそし始める。


「ゆあもある!」


そして取り出された、連絡帳みたいな紙。


まだ低学年の、かわいい成績表。


花丸いっぱい。


先生のコメント。


『いつも元気いっぱいです』


……すごく結愛っぽい。


唯ちゃん、笑ってる。


僕も吹き出した。


でも。


結愛は真剣。


「ゆあ、どう!?」


僕は笑う。


「すごくいいと思う」


すると。


結愛、嬉しそう。


「やったぁ!」


でも。


次の瞬間。


優月が、ある欄を見つける。


『給食を楽しそうに食べています』


沈黙。


そして。


家族全員、大爆笑。


唯ちゃんなんて涙出てる。


僕も笑いながら言う。


「先生、よく見てるなぁ」


結愛、誇らしげ。


「いっぱいたべた!」


たぶん先生にも伝わってる。


そのあと。


みんなでこたつに入りながら、通知表の話を続けた。


優月が、ぽつりと言う。


「なんか、成績表ってドキドキするよね」


僕は頷く。


「わかる」


子どもの頃。


嬉しかったり。


不安だったり。


ちょっと怒られそうだったり。


いろんな気持ちが詰まってた。


でも。


今は少し違う。


数字だけじゃなくて。


その子がどんなふうに頑張ってるかが、ちゃんと見える。


優月は、前より自分の気持ちを言えるようになった。


結愛は、毎日全力で笑ってる。


それだけでも、十分すごいことだと思った。


その時。


結愛が突然聞く。


「せいせきひょうって、おいしい?」


優月、吹き出す。


唯ちゃん、お腹抱えてる。


僕も笑いながら言う。


「たぶん食べないかな」


すると。


結愛、小さく呟く。


「ぷりんひょうならいいのに」


また始まった。


でも。


その一言で、またみんな笑っていた。


冬のこたつの中。


笑い声は、今日もぽかぽかだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ