カレー大会
数日後。
山本家では、ある重大イベントが始まろうとしていた。
その名も――
「第一回! 山本家カレー祭り!!」
発案者。
結愛。
理由。
「カレーいっぱいたべたい!」
シンプル。
土曜日の朝。
リビングには、謎のやる気が満ちていた。
優月は、エプロン姿で腕まくり。
唯ちゃんは、冷蔵庫から材料を並べている。
僕は、大量の鍋を準備。
そして。
結愛は、頭にタオル巻いてた。
なぜ。
今回のルール。
“みんなで好きなカレーを作る”。
つまり。
普通のカレーだけじゃない。
優月は、ちょっと大人っぽい「チーズカレー」。
唯ちゃんは、「野菜たっぷりカレー」。
僕は、「王道ゴロゴロ肉カレー」。
そして。
結愛は――
「ぷりんカレー!」
全員止まる。
「却下!」
即決。
結愛、超不満。
「なんでぇぇ!」
午前中。
キッチンは大忙し。
野菜を切る音。
ぐつぐつ煮込む音。
いい匂い。
優月は、真剣な顔で玉ねぎを炒めていた。
でも。
途中で涙目。
「目がぁ……」
結愛、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
僕も笑いながら言う。
「料理って戦いだね」
その時。
結愛が、じゃがいもを運ぼうとして――
ころころころ。
全部落とした。
「あぁぁ!!」
優月、笑い崩れる。
でも。
結愛は一生懸命拾っていた。
昼過ぎ。
ついに完成。
テーブルいっぱいのカレー。
湯気。
色んな香り。
まるで小さなカレーフェス。
結愛、拍手。
「すごぉぉ!!」
まずは、みんなで食べ比べ。
優月のチーズカレー。
濃厚。
美味しい。
唯ちゃんの野菜カレーは、優しい味。
僕の肉カレーは、かなり豪快。
結愛は、全部食べる。
超幸せそう。
「カレーって、しあわせ……」
その顔を見てるだけで笑ってしまう。
途中。
優月が、スプーンを持ちながらぽつりと言った。
「同じカレーでも、全然違うんだね」
僕は頷く。
作る人が違うと、味も違う。
でも。
どれもちゃんと“その人っぽい”。
なんだか家族みたいだった。
その時。
結愛が急に立ち上がる。
「つぎ、ゆあのばん!」
嫌な予感。
数分後。
結愛特製カレー完成。
……見た目は普通。
でも。
上にプリン乗ってる。
「やめなさい!!」
優月、笑いすぎて机叩いてる。
唯ちゃん、涙出てる。
僕も吹き出した。
でも。
結愛は本気。
「おいしいかも!」
そして――
一口食べる。
数秒後。
「……びみょう」
家族全員、大爆笑。
夜。
お腹いっぱいになって、みんなソファでゴロゴロ。
カレーの匂いがまだ残ってる。
結愛は、眠そうに言った。
「またカレーまつりする……」
優月が笑う。
「次はプリン禁止ね」
結愛、不満顔。
でも。
すぐ眠そうに笑った。
僕は、その姿を見ながら思う。
笑いながら食べるご飯って。
それだけで、ちゃんと幸せなんだなって。




