鍋
流星群を見に行った次の日。
外は、かなり冷え込んでいた。
朝から風が強い。
結愛なんて、こたつから出てこない。
「ここにすむ……」
完全に住民。
優月、大笑い。
唯ちゃんは、キッチンで冷蔵庫を見ながら考えていた。
その時。
僕が言う。
「今日、鍋にしない?」
数秒後。
結愛、こたつから飛び出す。
「なべぇぇ!!」
鍋だけは速い。
夕方。
スーパーへ買い出し。
白菜。
きのこ。
豆腐。
お肉。
そして。
結愛が、カゴへプリンを入れる。
「これは?」
「ひつよう!」
たぶん違う。
家へ帰ると。
みんなで準備開始。
優月は野菜を並べる係。
唯ちゃんは味付け。
僕は鍋担当。
結愛は――
しいたけに顔描こうとしてた。
「やめてぇ!」
優月、笑い崩れる。
しばらくして。
ぐつぐつ。
鍋から湯気が立ち始める。
いい匂い。
冬の幸せって感じだった。
みんなで席につく。
結愛、待ちきれない。
「まだ!?」
唯ちゃんが笑う。
「もうちょっと」
でも。
数秒後、また聞く。
「まだ!?」
せっかち。
やっと完成。
いただきます。
ふーっ、ふーっ。
熱い。
でも美味しい。
優月が、白菜を食べながら言う。
「鍋って、なんでこんな落ち着くんだろ」
僕は少し考える。
「みんなで同じの食べるからかな」
たしかに。
大きな鍋を囲んで。
同じ湯気を見て。
同じタイミングで「あつっ」ってなる。
それだけで、なんだか近く感じる。
その時。
結愛が、豆腐を落とした。
ぽちゃん。
汁はねる。
「あっ!!」
優月、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
でも。
結愛は真剣。
「とうふ、にげた……」
なんでそんな表現。
途中。
優月が、鍋の湯気をぼーっと見ながら言った。
「冬って好きかも」
「寒いのに?」
「うん。でも、“あったかい”がいっぱいある」
その言葉に。
僕は静かに頷いた。
鍋。
こたつ。
毛布。
ラーメン。
家族の笑い声。
寒い季節だからこそ、“温かさ”が嬉しくなる。
その時。
結愛が突然、鍋を見ながら聞く。
「ぷりんいれたらどうなる?」
全員止まる。
優月、吹き出す。
唯ちゃん、お腹抱えてる。
僕も笑いながら言う。
「たぶん怒られる」
結愛、しょんぼり。
でも。
数秒後。
プリン食べながら復活。
「おいしい!」
結局。
最後はいつも通りだった。
夜。
食べ終わったあと。
みんなで片付けながら、まだ少し鍋の匂いが残るリビング。
その空気が、なんだか好きだった。
僕は思う。
“特別な日”じゃなくても。
こういう夜が、あとから一番思い出になるのかもしれないって。




