結愛が、こたつから半分だけ顔を出して言った。
十二月。
空気が、すっかり冬になっていた。
朝。
庭にはうっすら白い霜。
結愛は、それを見つけて大興奮。
「こおり!?」
違うけど近い。
その日の午後。
唯ちゃんが、少し嬉しそうに言った。
「今日ね、お父さんたち来るよ」
つまり。
唯ちゃんの両親。
優月と結愛にとっては、もう一組のおじいちゃんとおばあちゃん。
結愛、即ジャンプ。
「やったぁぁ!!」
優月も笑ってる。
「久しぶりだね」
夕方。
ピンポーン。
結愛、また玄関へ全力ダッシュ。
最近いつも走ってる。
ドアを開けると。
唯ちゃんのお父さんとお母さんが、大きな袋を抱えて立っていた。
「こんばんは〜」
おばあちゃんは、ふんわり優しい雰囲気。
おじいちゃんは、少し無口だけど笑うとすごく優しい。
結愛、すぐ抱きつく。
「きたぁ!」
おじいちゃん、もう顔がデレデレ。
優月も、嬉しそうに笑っていた。
リビングへ入ると。
袋の中から、いろんなものが出てくる。
みかん。
お菓子。
そして――
大きなカニ。
結愛、固まる。
「……でかい」
優月、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
おじいちゃん、少し得意げ。
「北海道フェアで見つけてな」
その日の夜は。
豪華カニ鍋大会になった。
湯気。
いい匂い。
みんなで鍋を囲む。
結愛は、カニを見つめながら真剣。
「これ、ほんとにたべていいの……?」
宝物みたいな顔してる。
でも。
食べた瞬間。
「おいしぃぃぃ!!」
大感動。
おばあちゃん、嬉しそうに笑ってる。
その時。
唯ちゃんのお母さんが、庭の話を始めた。
「お花、写真で見たよ〜」
優月、すぐ立ち上がる。
「見せる!」
ということで。
寒い中、みんなで庭へ。
パンジー。
ラベンダー。
冬の空気の中で、小さく咲いている花たち。
おばあちゃんは、静かに目を細めた。
「ちゃんと育ってるねぇ」
唯ちゃん、少し照れながら笑う。
「みんなでお世話してるんです」
すると。
おじいちゃんが、ひまわりの種袋を見つける。
「来年も植えるのか?」
結愛、元気いっぱい。
「うん!!」
それから少し考えて。
「ぷりんも!」
全員吹き出す。
夜。
みんなでこたつへ入る。
結愛、完全に溶けてる。
「でられない……」
優月は、おばあちゃんと一緒にアルバムを見ていた。
唯ちゃんの子どもの頃の写真。
小さい唯ちゃん。
今の結愛そっくり。
僕、思わず笑う。
「似てる」
唯ちゃん、ちょっと恥ずかしそう。
結愛なんて大爆笑。
「ままちっちゃーい!」
その時。
おばあちゃんが、優しく言った。
「唯もね、小さい頃ずーっと喋ってたの」
結愛、即反応。
「ゆあといっしょ!」
たしかに。
そのやり取りが可笑しくて。
みんなで笑った。
夜遅く。
帰る前。
唯ちゃんのお父さんが、ふと僕へ言った。
「賑やかでいい家だな」
その言葉は、静かだったけど温かかった。
僕は、少し照れながら笑った。
「ありがとうございます」
帰ったあと。
静かになったリビング。
でも。
どこか、ぽかぽかしていた。
優月が、小さく呟く。
「おじいちゃんたち来ると、冬って感じするね」
僕は頷く。
「うん」
その時。
結愛が、こたつから半分だけ顔を出して言った。
「つぎは、さんたさん?」
家族全員、大爆笑。
山本家の冬は。
まだまだ賑やかになりそうだった。




