山本家の笑い声が、ふわっと広がっていった。
十一月。
朝、布団から出るのが少しずつ大変になってきた。
結愛なんて。
布団にくるまったまま言う。
「さむいから、きょうおやすみ……」
まだ小学生。
優月は、眠そうに笑ってる。
「冬眠するクマみたい」
唯ちゃんは、温かいスープを作りながら言った。
「ちゃんと起きてくださーい」
そんなある日。
庭のパンジーに、小さなつぼみができていた。
結愛、大発見した顔。
「できてる!!」
優月も駆け寄る。
ほんの小さなつぼみ。
でも。
ちゃんと“これから咲く”って感じがした。
唯ちゃんは、その花を見ながら優しく笑う。
「寒くなっても、ちゃんと育つんだね」
僕は、その言葉を聞きながら思った。
植物って不思議だ。
暖かい時だけじゃなくて。
寒い中でも、ちゃんと次の準備をしてる。
その週末。
みんなで公園へ行った。
紅葉がすごく綺麗だった。
赤。
黄色。
オレンジ。
風が吹くたび、葉っぱが舞う。
結愛は、落ち葉を集め始める。
「みてぇ!」
両手いっぱい。
でも。
途中で全部落とす。
優月、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
その時。
優月が、静かに空を見上げながら言った。
「葉っぱって、なんで落ちるんだろ」
僕は少し考える。
すると。
唯ちゃんが答えた。
「また春に、新しい葉っぱを作るためかな」
優月は、落ちてくる葉っぱを見つめながら小さく頷いた。
「そっか」
その横で。
結愛が突然。
「じゃあ、ぷりんもおちる?」
もう全部プリン基準。
家族全員、吹き出した。
帰り道。
焼き芋屋さんを発見。
あの懐かしい音。
「い〜しや〜きいも〜」
結愛、即反応。
「たべる!!」
ということで。
みんなで焼き芋タイム。
湯気。
甘い匂い。
寒い空気の中で食べると、すごく美味しかった。
優月が、小さく言う。
「冬って寒いけど、あったかいね」
僕は笑った。
「どっちだろうね」
優月は、焼き芋を持ちながら続ける。
「だって、みんな近くなる」
その言葉に。
僕は少し驚いた。
たしかに。
寒い季節って。
自然と、みんな同じ場所へ集まる。
温かいご飯。
温かい部屋。
温かい笑い声。
冬って、“近くなる季節”なのかもしれない。
その時。
結愛が、熱々の焼き芋を慌てて食べて――
「あっつぅ!!」
口ぱたぱた。
優月、笑い崩れる。
唯ちゃん、涙出るほど笑ってる。
僕まで吹き出した。
秋の終わりの空に。
山本家の笑い声が、ふわっと広がっていった。




