季節が変わっても。 この家には、ちゃんと“笑う時間”が育ってるんだなって。
十月。
秋が、ちゃんと町にやってきた。
朝の空気はひんやり。
庭には、落ち葉。
結愛は、それだけでテンションが上がっていた。
「カサカサするー!」
落ち葉の上を、わざと歩いてる。
優月は、少し色づいた庭をスケッチしていた。
夏とは違う色。
オレンジ。
赤。
やわらかい茶色。
その日の午後。
唯ちゃんが、庭を見ながら言った。
「次は秋のお花も育ててみようかな」
結愛、即反応。
「なにいろ!?」
優月も興味津々。
結局。
コスモスとパンジーを植えることになった。
ホームセンターで苗を選ぶ時間。
唯ちゃん、楽しそう。
「この色かわいい〜」
優月は、紫のパンジーを見つめていた。
「なんか大人っぽい」
結愛は――
オレンジの花を両手いっぱい抱えてる。
「げんきそう!」
たしかに結愛っぽい。
家へ帰ると、またみんなで庭仕事。
僕は土担当。
優月は苗を並べる係。
唯ちゃんは植え方チェック。
結愛は――
落ち葉集め。
でも。
途中から落ち葉を空へ投げ始める。
「わぁぁぁ!!」
秋満喫してる。
その時。
ふわっと風が吹いた。
舞い上がる落ち葉。
夕方の光。
笑ってる子どもたち。
その景色が、なんだか映画みたいだった。
夜。
みんなで焼き芋を食べる。
庭で小さく焼いたやつ。
結愛、熱くて持てない。
「あちちち!」
優月、大笑い。
唯ちゃんも笑ってる。
でも。
頑張って食べたあと。
結愛、目をまんまるにする。
「おいしぃぃ……」
秋の味だった。
その時。
優月が、焼き芋を見ながらぽつりと言う。
「なんかさ」
「ん?」
「夏の庭と、秋の庭って全然ちがうね」
僕は頷く。
「うん」
優月は、小さく笑った。
「でも、どっちも好き」
その言葉に。
唯ちゃんが優しく言った。
「変わるから、楽しいのかもね」
変わる景色。
変わる季節。
でも。
その中で、一緒に笑ってる人は変わらない。
僕は、そのことがなんだか嬉しかった。
その時。
結愛が突然。
「ふゆになったら、ゆきうえる?」
家族全員、大爆笑。
優月なんて、笑いすぎて焼き芋落としそう。
唯ちゃん、涙出てる。
でも。
結愛は本気だった。
「だってしろいし!」
その自由さが、山本家だった。
秋の夜。
庭には新しい花の苗。
空には丸い月。
僕は、その景色を見ながら思った。
季節が変わっても。
この家には、ちゃんと“笑う時間”が育ってるんだなって。




