すごく幸せなことなんだろうなって。
ある土曜日の朝。
山本家は、いつもより少しだけソワソワしていた。
理由は――
僕の両親が遊びに来るから。
つまり。
優月と結愛にとっては、おじいちゃんとおばあちゃん。
結愛は、朝から大興奮。
「じぃじとばぁばくる!?」
五回くらい聞いてる。
優月は、少し落ち着いてるけど嬉しそうだった。
「ひまわり見せたいな」
唯ちゃんは、お茶菓子の準備中。
僕は掃除担当。
……だったんだけど。
棚の角に足ぶつけた。
「っっ!!」
優月、即反応。
「ぱぱ、今日も元気だね」
どういう意味。
昼前。
ピンポーン。
結愛、玄関へ全力ダッシュ。
「じぃじぃぃ!!」
ドアを開けると。
おじいちゃんとおばあちゃんが立っていた。
おばあちゃんは、優しい笑顔。
おじいちゃんは、大きな荷物を抱えてる。
結愛、飛びつく。
「おおきくなったなぁ〜!」
おじいちゃん、もうデレデレ。
優月も、少し照れながら挨拶する。
「いらっしゃい」
おばあちゃんが、優月の頭を優しく撫でた。
「優月ちゃん、また背伸びた?」
優月、ちょっと嬉しそう。
リビングへ入ると。
すぐに結愛の“案内ツアー”開始。
「これね!」
「おはな!」
「とまと!」
庭まで引っ張っていく。
おじいちゃん、笑いっぱなし。
「忙しいなぁ〜」
ひまわりを見たおばあちゃんが、優しく目を細めた。
「綺麗に咲いたねぇ」
唯ちゃん、少し照れながら笑う。
「みんなで育てたんです」
すると。
おじいちゃんが突然しゃがみ込む。
真剣な顔でトマトを見る。
「これは、いいトマトだ」
農家みたいなコメント。
結愛、目キラキラ。
「じぃじ、わかるの!?」
「うん。おいしそうだ」
その瞬間。
結愛、超誇らしそう。
昼ごはんは、みんなで手巻き寿司。
結愛、巻きすぎて崩壊。
優月、笑い転げてる。
おじいちゃんは、静かに僕へ言った。
「賑やかでいいな」
僕は、その言葉を聞いて少し笑った。
昔。
僕も、こんなふうに騒いでたのかなって思った。
午後。
アルバム大会が始まる。
おばあちゃんが持ってきた古い写真。
小さい頃の僕。
変な髪型。
泥だらけ。
優月、大爆笑。
「ぱぱ!?!?」
結愛なんて転がって笑ってる。
「ちっちゃーい!!」
僕、ダメージ大。
唯ちゃんまで笑ってる。
でも。
おじいちゃんとおばあちゃんは、すごく嬉しそうだった。
「懐かしいねぇ」
その顔を見て。
僕は思う。
家族って。
“今”だけじゃなくて。
昔の時間も、一緒に繋がってるんだなって。
夕方。
帰る時間。
結愛、しょんぼり。
「もうかえるの……?」
おばあちゃんが優しく抱きしめる。
「また来るよ」
おじいちゃんも笑った。
「次はもっと大きいトマト見せてくれ」
結愛、真剣に頷く。
「まかせて!」
玄関で手を振る。
車が見えなくなるまで、結愛はずっと振っていた。
夜。
静かになったリビング。
でも。
どこか温かい空気が残っていた。
優月がぽつりと言う。
「なんか今日、いっぱい笑ったね」
僕は笑った。
「うん」
その時。
結愛が眠そうな顔で聞く。
「じぃじたち、またくる?」
僕は頷く。
「きっと来るよ」
結愛は、安心したみたいに笑った。
「よかったぁ」
その笑顔を見ながら。
僕は静かに思った。
“帰ってきてくれる場所”があるって。
すごく幸せなことなんだろうなって。




