きっと、“大事にする時間”なんだろうなって。
旅行から帰ってきて、数日後。
山本家は、ちょっとだけ“旅行ロス”だった。
結愛なんて。
朝起きて第一声。
「ぺんぎんさんいない……」
そりゃいない。
優月、大笑い。
でも。
どこか家の中が静かだった。
そんなある日の午後。
唯ちゃんが、庭を見ながらぽつりと言った。
「なんか育てたいなぁ」
僕が聞き返す。
「育てる?」
「うん。お花とか、野菜とか」
その瞬間。
結愛、食いつく。
「ぷりん!?」
育たない。
優月なんて笑いすぎてソファから落ちそう。
結局。
次の休日、みんなでホームセンターへ行くことになった。
苗コーナー。
花の香り。
色とりどりの鉢。
唯ちゃん、目がキラキラしてる。
「かわいい〜!」
その姿を見て、僕は思う。
唯ちゃんって、“小さな幸せ”見つけるの上手だなって。
優月は、ラベンダーを見つめていた。
「これ好きかも」
結愛は――
トマトの苗を抱えてる。
「たべる!」
目的が明確。
最終的に。
ミニトマト。
きゅうり。
ひまわり。
ラベンダー。
それから、小さな白い花を買った。
家へ帰ると、さっそく庭づくり開始。
唯ちゃん、帽子かぶって本気モード。
優月は説明書読んでる。
僕は土運び。
結愛は――
泥遊び。
予想通り。
「どろんこぉぉ!」
顔まで泥ついてる。
唯ちゃん、笑いながら言う。
「結愛が一番自然と仲良しだね」
数時間後。
小さな家庭菜園、完成。
並んだ苗。
新しい土。
まだ小さいけど、ちゃんと“これから”って感じがした。
夕方。
みんなで水やり。
じょうろを持った結愛が真剣。
でも。
ほぼ自分にかかってる。
「つめたぁ!」
優月、大爆笑。
唯ちゃんも笑ってる。
その時。
優月が、小さな白い花を見ながら言った。
「なんかさ」
「うん?」
「花って、“待つ”んだね」
僕は、その言葉に少し驚く。
優月は続ける。
「すぐ咲かないけど、毎日ちょっとずつ変わる」
唯ちゃんが、優しく頷いた。
「うん。人も似てるかもね」
その言葉を聞いて。
僕は、庭を見つめる。
小さな苗。
まだ頼りない茎。
でも。
ちゃんと空へ向かって伸びている。
その姿が。
なんだか子どもたちに重なった。
夜。
窓から庭を見ると。
小さな苗たちが、風に揺れていた。
結愛が、眠そうな声で聞く。
「おはな、あしたさいてるかな」
唯ちゃんは笑った。
「まだかなぁ」
結愛、ちょっとしょんぼり。
でも。
優月が優しく言う。
「ゆっくりだから、楽しみなんだよ」
結愛は、その言葉を聞いて静かに頷いた。
「そっか」
その瞬間。
僕は思った。
待つ時間って。
きっと、“大事にする時間”なんだろうなって。




