夢の中でも、海外旅行してた。
シンガポール二日目。
朝。
カーテンを開けると――
大きな街が、朝日に光っていた。
「うわぁ……!」
優月が、目を輝かせる。
結愛は、ベッドの上でぴょんぴょん。
「がいこくだぁ!!」
昨日からずっと言ってる。
ホテルの朝ごはん。
並んでいる料理は、日本と少し違った。
見たことないパン。
カラフルなフルーツ。
甘い香り。
結愛は、ゼリーみたいなデザートを見つける。
「これぷりん!?」
違う。
でも食べる。
「……ぷりんじゃない!」
そりゃそう。
優月、大笑い。
その日は、家族みんなで大きな水族館へ行くことになった。
巨大な水槽。
ゆっくり泳ぐエイ。
光るクラゲ。
結愛、ずっと走りそうになってる。
「まってぇ!」
僕が追いかける。
すると。
大きなペンギンエリアへ到着。
結愛、静止。
数秒後――
「ぺんぎんさぁぁぁん!!」
大歓声。
周りの人がちょっと笑ってる。
でも。
結愛は気にしない。
ペンギンの前で、ずっと手を振っていた。
その横で。
優月は、スケッチブックを開く。
水の青。
ペンギン。
楽しそうな結愛。
さらさら描いていく。
僕は、その様子を見ながら思った。
優月って。
“楽しい瞬間”を残すのが上手なんだなって。
昼。
屋台みたいなお店でご飯を食べる。
初めての料理。
少し辛い味。
結愛、水を一気飲み。
「からぁぁい!」
優月、大爆笑。
唯ちゃんまで笑ってる。
でも。
結愛、なぜかまた食べる。
「でもおいしい!」
挑戦してる。
少しずつ。
世界が広がってるんだろうな。
夕方。
有名な夜景スポットへ行った。
空が暗くなるにつれて。
街が、キラキラ光り始める。
高いビル。
川に映る光。
優月が、小さく呟く。
「絵みたい……」
結愛も、静かだった。
珍しい。
その時。
突然、音楽が流れ始めた。
光のショー。
色が空へ広がる。
結愛、目をまんまるにしてる。
「まほうみたい……」
僕は、その横顔を見ながら思う。
子どもたちにとって。
“初めて見る景色”って、本当に特別なんだなって。
ホテルへ戻る帰り道。
結愛は、僕の肩にもたれて眠っていた。
優月は、窓の外を見ながらぽつりと言う。
「知らない場所なのに、楽しいね」
僕は笑った。
「みんな一緒だからかな」
優月は、その言葉を聞いて小さく笑った。
「そっか」
その時。
寝てる結愛が突然。
「……ぺんぎんさん……ともだち……」
家族全員、吹き出す。
たぶん。
夢の中でも、海外旅行してた。




