家族って。 “好き”を何回も積み重ねてできていくものなんだろう。
八月。
夏休みまっただ中。
朝からラジオ体操。
セミの声。
冷たい麦茶。
そして山本家では――
“宿題戦争”が始まっていた。
「やりたくなぁい……」
結愛、机に溶けてる。
優月は、ちゃんと進めているけど、自由研究で悩んでいた。
「うーん……」
僕が聞く。
「なにするか決まらない?」
優月は頷く。
「せっかくだから、“好き”なことにしたい」
その言葉を聞いて。
結愛が突然立ち上がる。
「ぷりん!」
違う。
でも。
優月は、ふと笑った。
「……あ」
「ん?」
「“家族の好きなもの”調べるの、楽しそうかも」
ということで。
優月の自由研究。
『山本家の好きなもの調査』スタート。
まずはインタビュー。
優月、ノート片手に真剣。
「ぱぱの好きなものは?」
僕は少し考える。
「みんなで笑ってる時間かな」
優月、ちょっと照れくさそうに笑った。
「なんか、ぱぱっぽい」
次。
「ままは?」
唯ちゃんは、少し考えてから言う。
「みんなで食べるご飯」
優月、メモ。
そして――
「結愛は?」
結愛、待ってました顔。
「ぷりん!!」
即答。
優月、大爆笑。
「やっぱり!」
そのあと。
優月は、家族の好きなものを絵や言葉でまとめ始めた。
笑ってる顔。
好きなお菓子。
好きな時間。
ページがどんどん埋まっていく。
僕は、その様子を見ながら思った。
“好き”を集めるって、なんだか幸せな作業だなって。
夜。
クーラーの効いた部屋で、みんなでスイカを食べる。
結愛、種飛ばし挑戦。
失敗して自分に当たる。
優月、笑い転げる。
唯ちゃんは、優月の自由研究を見ながら優しく言った。
「すごくいい研究だね」
優月は、少し嬉しそう。
「ほんと?」
「うん。“家族らしい”」
その言葉を聞いて。
優月は、ノートを見つめながら小さく笑った。
「わたし、この家族すき」
その一言に。
僕は、なんだか胸がじんわりした。
たぶん。
家族って。
“好き”を何回も積み重ねてできていくものなんだろう。
その時。
結愛が突然。
「ゆあも!」
「ん?」
「このかぞく、だいすき!」
スイカ汁つけたまま叫んでた。
家族全員、大爆笑。
でも。
その言葉は。
ちゃんと、みんなの心に残った。




