優月、ちゃんと“誰かを元気にする言葉”を覚えてるんだなって。
七月。
暑さが、一気に本気を出してきた。
朝から蝉の大合唱。
結愛は、学校へ行く前から汗だく。
「もうあついぃ……」
ランドセル背負っただけで夏。
優月は、首にタオル巻きながら笑ってる。
「夏って感じだね」
そんなある日。
結愛が、学校からしょんぼりして帰ってきた。
「ただいま……」
声が小さい。
僕と唯ちゃん、すぐ気づく。
「どうした?」
結愛は、ランドセルを置いてからぽつりと言った。
「きょうね……」
「うん」
「え、じょうずにかけなかった」
どうやら。
学校で描いた絵が、思ったように描けなかったらしい。
結愛は、少し悔しそうだった。
「みんな、じょうずだったのに……」
その言葉を聞いて。
優月が静かに結愛の隣へ座る。
「みせて?」
結愛は、ランドセルから画用紙を取り出した。
そこには。
大きなひまわり。
ちょっと形はいびつ。
でも。
黄色が元気いっぱいで、結愛らしい絵だった。
優月は、じっと見てから笑った。
「かわいい」
結愛、すぐ聞き返す。
「ほんと?」
「うん」
優月は指をさした。
「このおっきい黄色、元気って感じする」
結愛は、少し驚いた顔をした。
優月は続ける。
「上手とかより、“結愛っぽい”っていいと思う」
その言葉に。
結愛の顔が、少しずつ明るくなる。
僕は、その様子を見ながら思った。
優月、ちゃんと“誰かを元気にする言葉”を覚えてるんだなって。
夜。
夕飯は、そうめん。
結愛、氷いっぱい入れてる。
冷やしすぎ。
食べながら。
結愛が突然言った。
「ゆあね、またかく」
僕は笑った。
「いいね」
「つぎはもっとおっきいの!」
優月、大笑い。
「ひまわりより大きい?」
結愛、真剣。
「たいようくらい!」
スケールでかい。
でも。
そのくらいの気持ちでいいのかもしれない。
失敗しても。
悔しくても。
また描きたいって思えること。
それが、きっと大事なんだ。
その週末。
みんなで花火をした。
夜の公園。
小さな手持ち花火。
ぱちぱち光る火を見ながら、結愛が笑う。
「きらきら!」
優月は、静かに線香花火を見つめていた。
その横顔が、夏の光で少し大人っぽく見える。
その時。
僕の花火が、突然ボトッと落ちた。
「あっつ!!」
優月、爆笑。
結愛、転げ回って笑ってる。
唯ちゃん、笑いながら動画撮ってる。
結局。
最後はいつも通りだった。
でも。
笑い声が響く夏の夜は。
なんだか、すごく綺麗だった。




